初登場で世界2位、80カ国で週間ランキング入り こだわり抜いた『新幹線大爆破』が”日本発Netflix映画”の成功例といえる訳

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製作スタッフのネームバリューも確かです。『シン・ゴジラ』(16年)、『シン・ウルトラマン』(22年)を代表作に持つ樋口真嗣監督がメガホンを取っています。

豪華な顔ぶれで名作をリブートした印象の強い本作ですが、作品の魅力は特撮に振り切ったことにあると思います。特撮映画の第一人者である樋口監督が「これまで諦めていたことが全て望み通りにできた」と言い切るほど、国内では前例のない規模で撮影が行われたのです。

樋口監督「どうせやるならチャレンジしたい」

そもそも特撮とは、ミニチュア模型を使って大規模なシーンを演出したり、デジタル生成した映像を組み合わせて本物かのように見せたりする撮影技術のことを指します。模型の精度や規模、手間のかけ方によって製作予算が変わり、ある意味では”調整がしやすい“と言えますが、あまりに予算を抑えようとするとニセモノ感が強まってしまいます。

そのことを誰よりもわかっているであろう樋口監督が、Netflix側に「予算に関して無茶は言えないものの、どうせやるならチャレンジしたい」と伝えたところ、その気持ちは一致したそうです。Netflixが4月21~22日に開催したAPACプレス向け「フィルムショーケース 2025」では、「30年以上この仕事をしていますが、これほどまで挑戦できたことは初めてだった」と明かしていました。

実際、日本の映像業界の常識を塗り替えるような撮影現場だったとか。一般的な特撮では、ミニチュア模型は実物の10分の1もしくは25分の1のサイズに限られますが、本作では実物の新幹線の6分の1サイズのミニチュア模型が作られています。

また車内シーンでは、本物の新幹線と同じ素材を使って2両分の車両を完全再現しました。これは50メートルプールとほぼ同じ長さにあたる巨大セットです。さらに、走行中の新幹線の姿を活写するため、特別ダイヤで専用の貸し切り臨時列車を7往復走らせてベストの映像を切り取りました。撮影用であれば普通は1、2往復が限界と言われていますが、本作はリアリティを出すためにこだわり尽くしたのです。

ニセモノ感が全くない新幹線
ニセモノ感がまったくない。特撮を駆使し、日本の映像業界の常識を塗り替えるような撮影現場だったという(画像:Netflix)

とあるシーンからは、損傷した姿の新幹線が走行しますが、これにも樋口監督のこだわりが詰まっていました。「こればかりは滅茶苦茶なことを(VFXチームに)お願いしちゃった」と茶目っ気たっぷりに語り始め、「新幹線に傷がつくことによって、人に対するように新幹線にも感情移入できるんじゃないかと思ったんですよ」と説明していました。まんまと新幹線をもう1人の主役のように感じますから、樋口監督の狙い通りです。

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