半永久的に税率を下げるとすると、失われる消費税収が充当されていた社会保障給付は、どうやって維持するのか。
消費税は、社会保障財源化されており、社会保障4経費(医療、介護、年金、子ども・子育て支援)に充てられている。それでいて、今の消費税収だけでは社会保障4経費を賄い切れていない。2025年度当初予算ベースでは、消費税収が国と地方合わせて(社会保障財源とされていない地方消費税1%分を除く)28.4兆円なのに対して、社会保障4経費は47.9兆円にも達し、19.5兆円も足りない状態である。
そこに、食料品等の軽減税率をゼロにすると約5兆円の税収が失われるとされる。前掲した2025年度予算でみると、47.9兆円に達する社会保障4経費に充当される消費税収は23.4兆円となり、24.5兆円も足りず必要な財源の半分にも満たない状態となる。
そこで赤字国債を増発すれば工面できるという言説もある。
しかし、今年の社会保障給付は、今を生きる国民が恩恵を受けてそれで費消するものであって、将来の国民は直接恩恵を受けることはない。そうした支出のために、半分以上も今を生きる国民が負担をせずに、将来につけ回せばどうなるか。
消費税率を引き下げて、その分の社会保障費を赤字国債で賄えばよいというのは無責任すぎる。目先の物価高で生活が苦しいとしても、
減税分そのまま値下げとは限らない
そもそも、消費税の軽減税率をゼロにしようとしても、今日決めれば明日には実施できるというものではない。
まずは、わが国は日本国憲法の定めにより租税法律主義をとっている。法律で事前に定めた通りにしか課税してはならないという、民主主義の基本である。したがって、消費税法で軽減税率をゼロにするという法改正をしなければならない。
法改正ができたとしても、スーパーマーケットのレジスターや企業の経理ソフトなどで、税率を変更する修正をしなければ、消費者は税率を引き下げた恩恵は受けられない。
自動販売機は典型的だ。値札は税込みである。税込み価格の値段を修正しなければ、税率が下がっても買値は変わらない。これまでは8%分の消費税を税務署に納めて残りが企業の(税抜きの)売上だったが、消費税率をゼロにした後で値段を修正しなければ、これまで納税していた分まで全部が企業の売上となる。
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