ついに立憲民主も...夏の参院選対策の「消費税減税」、“一時的”はまやかし、本当に消費者に恩恵はあるのか?より有効な負担軽減の方策とは

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もちろん、企業は値札を変えるだろう。しかし、現在8%の税率がゼロになったからといって、まるまる8%分値下げする必然性はない。それに、消費税以外に物価に与える要因は他にもある。

消費税を下げたのに、思ったほど物価が下がらなかったということは起こりうる。

現に、2020年に消費税(付加価値税)率を引き下げたドイツでは、多くの企業は税率が下がったほどには税込み価格を引き下げなかったという。これでは、消費税率引き下げの恩恵は消費者には及ばない。

消費税減税以外の方法で、消費者に恩恵をもたらすことはできないのか。その方法はまだ残されている。

それは、社会保険料負担の軽減である。

消費税より重い社会保険料負担

実は、すべての所得層で、社会保険料の負担率のほうが、消費税の負担率よりも重い。これがわが国の実態である。

簡単にその実態のイメージを紹介しよう。

概算で見て、課税前収入を100とすると、所得税と個人住民税の負担は平均で5%(実績値では2~20%超)、社会保険料の負担は平均で15%ある。所得税と個人住民税と社会保険料を差し引いた手取り所得(可処分所得)は、平均して課税前収入の80%(実績値は65~83%)である。

この手取り所得から、消費をすると消費税を払う。これを仮にすべて消費して消費税率が10%だとしても、消費税負担は高くとも課税前収入に比して8%(=80%の約10%)にすぎない(実績値では2.5~5%)。

社会保険料負担は課税前収入の15%なのに対して、消費税負担は課税前収入の数%という人が大半というのが真実である。

だから、社会保険料負担を軽減するほうが、大きく負担軽減する余地がある。消費税減税をしても、気慰みにすぎない。

しかも、高所得者にまで社会保険料を負担軽減する必要はなく、低中所得層に重点的に軽減策を講じることで、必要な財源も少なくて済む。それに、社会保険料の負担軽減を恒久的にもできるし、時限を区切って講じることもできる。

低中所得層は、消費税減税では救われない。社会保険料の負担軽減を、社会保障制度改革と並行して実現することこそが、「年収の壁」の撤廃もできるし、手取り所得の増加につながる。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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