
少数与党内閣である第2次石破茂内閣は、予算案の修正という稀な事態に直面している。しかも、修正して衆議院で可決させた予算案が、参議院での審議中に再修正を迫られることとなった。
事の発端は、高額療養費制度の上限引き上げを一部撤回することを踏まえて修正された予算案が衆議院で可決され、参議院に送られた後に、石破首相が上限引き上げを完全に撤回すると決断したことだった。
予算案の修正自体、1953年度、1954年度、1955年度、1996年度に次いで5度目という稀なことなのに、それを再修正することは前代未聞である。
予算案をめぐって内閣の姿勢が乱れるとどうなるか。それが今の石破内閣が置かれた状況である。
予算の再修正は内閣の求心力をそぐ
予算案を朝令暮改的に修正すれば、予算をめぐって百家争鳴の意見があるなかで、予算要求に歯止めがかけられなくなり、権力の求心力は失われる。
ただでさえ、当初の予算案を取りまとめるときに、すべての予算要求を受け入れるわけにはいかないから、取捨選択をする。採用されればよいが、採用されなければ不満が残る。しかし、それを将来的な約束や別の恩恵などでディールをして矛を収めてもらい、取りまとめた予算案になんとか賛同を取り付ける。
矛を収めて我慢した側からすれば、我慢したはずなのにまったく別の筋から違う予算要求が出てきて、それが修正案では認められる、ということでは、腹の虫がおさまるはずはない。
予算案の修正というものが、いかに内閣の求心力に傷をつけるものなのか。2025年度予算審議は、そうした記録として後世に残るだろう。
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