ミャンマー大地震から1カ月、被災地で奮闘する日本人医師、被災者間の互助精神でゆっくりと復旧へ、今後は感染症対策がカギ

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さらに今回は、地震という“点”での被害であり、一定の地域全体が被災しているわけではありません。この国では、天災といえば主に水害が多く、いわゆる“面”での被害となることが多いため、広範囲に深刻な影響が及びます。そのような場合には、非常に厳しい状況に陥ることになります。もちろん、今回の地震も局地的には甚大な被害が出ていますが、被害が全体に広がっていないことにより、“互助精神”を持つミャンマーの人々が、お互いに助け合うことができている点は、不幸中の幸いだと感じています」

物流が今後の復興のカギ

今後の復興のカギは「物流」にあると、吉岡医師は指摘します。

「ミャンマーは6月頃から雨季に入ります。そうなると感染症の発生が懸念されるため、食料品や飲料水に加えて、医薬品が滞りなく入手できる体制を整えることが重要です。この3つが確実に供給されれば、互助精神にあふれたミャンマーの人々は、自分たちの力で着実に復興を進めていけるはずです」

そのためジャパンハートでは、次の支援フェーズとして物資の配布を中心に据えた活動を展開していく方針です。とりわけ、支援が届きにくい地域や村々に対しては、モバイルクリニックなどを活用し、重点的な物資支援を行っていく予定です。

「ミャンマーは、私の経験上、外国のNGOが活動しにくい国です。とくに、外国人が直接関わる支援に対しては否定的な傾向があり、そのことが障壁となることもしばしばあります。そのためジャパンハートでは、医師や管理者を含め、すべてミャンマー人で構成された支援組織を構築してきました。
災害発生直後こそ、政府も一時的に外国人の活動を認めることがありますが、1カ月も経つと、徐々に制限が強まっていくと予想されます。これからは、ジャパンハートの強みである“ミャンマー人による支援”を最大限に生かし、支援の届かない人々に対して、必要な物資と医療を確実に届けていくつもりです」

30年にわたり、ミャンマーの現場で人々に寄り添い、地道な支援を積み重ねてきた吉岡医師ならではの、冷静かつ確かな見通しのもと、復興に向けた準備が着実に進められています。

特定非営利活動法人ジャパンハート(国際医療NGO)
ホームページ:https://www.japanheart.org/
ミャンマー地震緊急支援募金:募金ページ
https://www.japanheart.org/topics/support/earthquake_myanmar_2025.html
西垣 充 ジェイサット(J-SAT)代表

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にしがき みつる

ミャンマー専門コンサルティング会社「ジェイサット(J-SAT)」代表。大手経営コンサルティング会社から、1996年4月に日系企業のヤンゴン事務所に転職。98年に独立し、同地にてJ-SATを設立。企業のミャンマー進出支援やミャンマーでは最難関の日本語学校を運営、ミャンマー人エンジニアや日本語が話せる技能実習生・特定技能生派遣など、一貫してヤンゴンに常駐してビジネスを行う。

ジェトロ・プラットフォームコーディネーターや大阪府ビジネスサポートデスク、福岡アジアビジネスセンターなど公的機関のアドバイザーも務めるミャンマー支援の第一人者。

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