ミャンマー大地震から1カ月、被災地で奮闘する日本人医師、被災者間の互助精神でゆっくりと復旧へ、今後は感染症対策がカギ

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吉岡医師は、1995年にミャンマーで医療活動を開始し、2004年には自身で国際医療ボランティア団体ジャパンハート(Japan Heart)を設立しました。

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ジャパンハートの拠点・ワッチェ慈善病院の手術室(撮影・吉岡秀人医師)

現在は、ミャンマーやカンボジアをはじめとする東南アジア地域を中心に医療活動を展開する認定NGO法人として、最高顧問を務めています。

現在もなお、月の約3分の2を海外の医療現場で過ごし、残りの3分の1を日本国内での講演活動に充てるなど、医師として精力的な活動を続けています。

地震発生前から外科医不在の土地

「地震が発生する以前から、この地域には内戦の影響で外科医がまったくいない状況が続いています。30年間にわたりミャンマーで医療活動を行ってきましたが、今が最も現地から必要とされていると感じると同時に、医師としてのやりがいを強く実感しています」と、吉岡医師は語ります。

そんな吉岡医師に、地震発生から1カ月が経過した被災地の様子について伺いました。

「マンダレー市内ではおよそ3割の建物が半倒壊し、サガイン市内では7割近くの建物が半倒壊しているように感じられますが、予想していたほど人々に悲壮感は見られず、むしろ落ち着いた様子で日常を取り戻そうとしている印象を受けます。
まず、この国の人々には『政府に助けてもらう』という発想がほとんどありません。これまで長く軍政が続き、現在もクーデター下にあるため、『現実を受け止め、自分たちで何とかしなければならない』という意識が非常に強く、人々の間には“互助精神”が深く根付いています。
また、インフラ自体がもともと脆弱で、停電は日常的に起きていました。そのため、電気が来ない状況にも慣れており、それほど大きな混乱にはなっていないのです。加えて、主要産業が農業であることから、食料に関しても大きな不足は見られません。
ただ、1つ変化があるとすれば、かつては雨水や池の水を飲むのが一般的だったのに対し、近年の経済発展によってミネラルウォーターを飲む習慣が広まり、飲料水の需要が高まっている点です。むしろ今回の地震で最も困っているのは、電気のある生活に慣れてしまった中間層以上の人々ではないか、と私は感じています。
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