このところの円安は国力低下のせい?それとも新NISAのせい?「為替に関する臆測や誤解」を解く
ただ、日本の財政赤字の大きさの話題も、今に始まったことではありません。また、2024年9月末時点で、日本の国債及び国庫短期証券(T-Bill)の保有者のうち、海外は12.0%に過ぎません。国債だけに絞ればわずか6.5%です。
これは増加傾向にはあるのですが、アメリカでは国債の30%、欧州では40~50%が海外で持たれているのに対し、日本国債の海外保有率はかなり低く抑えられています。
仮に「日本の先行きへの不安から日本の国債を売る」という流れになったとしても、日本の投資家に関しては「リスクを避けるために」国債に投資しているので、国債を売っても円の現金で保持されてしまう部分は大きいと考えられ、即、円安が強まる、というものではないと見ています。
むしろ、日本の財政不安によってリスクが意識される場面では、国内の大口機関投資家が海外から資産を手元に戻す動きが加速し、まずは円高に振れる可能性すら考えられます。
なお、2024年末から2025年初めにかけて、日本の金利上昇は確かに見られましたが、これはアメリカの金利上昇に連れている部分が大きかったと考えられます。
また、2025年2月から3月にかけても日本の金利が急激に上昇する場面が見られましたが、これは日銀の今後の金融政策を先食いで織り込んでいる部分が大きく寄与していると見られます。
本稿執筆時点では、日本の国債市場において、日本の財政破綻などをリスク要因視しての「日本売り」的な円売りが発生している様子はありません。
将来的に、「財政不安による日本売り」を理由とした円売りが発生する可能性を否定するものではありませんが、ここ数年の円安を説明する要因としては的外れな印象です。
円安は「新NISA」のせい?
2024年1月、NISA(少額投資非課税制度)は見直され、新たな制度となりました。
非課税投資枠の大幅な拡大と、制度の恒久化が目玉で、「家計の安定的な資産形成」を促進することが目的とされており、日本国民の中でも大いに話題になりました。
そしてその際に関心を集めたのが、アメリカ株式や「オルカン」と呼ばれる全世界株式の投資信託です。
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