トランプ政権の大学攻撃の本質と大学の矜持(中)政権に大幅譲歩した学長代行は辞任、コロンビア大学は完全降伏

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タスクフォースは「コロンビア大学の発表は大学にとってアメリカ合衆国との資金関係を維持するための前向きな第1歩である」と評価し、助成金4億ドル(内2億5000万ドルは国立衛生研究所からの助成金)の凍結を解除した。

コロンビア大学のアームストロング学長代行は「大学の対応はすべての学生、教職員の安全を守るためのもので、歓迎されるだろう」という書簡を出した。だが、『ニューヨーク・タイムズ』は、「トップ大学からのトランプ政権に対する驚くべきレベルの敬意を反映している」と、コロンビア大学が過剰な譲歩をしたと指摘している(3月21日、「Columbia Agrees to Trump’s Demands After Federal Funds Are Stripped」)。

資金面での政府依存で失われた大学の自治

つまり、コロンビア大学の“完全降伏”である。ウェブニュース『AXOS』は「コロンビアは4億ドルの助成金を取り戻すためにトランプに要求に屈した」と題する記事を掲載している。そして「トランプ政権の大学攻撃が大学の雇用や補助金において、人々に大きな不安を引き起こしたことで、この合意が成立した」と説明している。

1週間後の3月28日、アームストロング学長代行は辞表を提出した。外部圧力によって大学の自治が侵されたというのが辞任の理由である。学長代行は学生8人から告訴され、教員の反乱に直面した。学長代行の決定が、大学関係者のすべてによって支持されたわけではない。政府に書簡を送った後、学長代行はズームで約70人の教員と75分にわたる会議を開いた(『Washington Free Beacon』、「What Columbia University President Katrina Armstrong Really Told Faculty Members About Changes the School is Making」)。激怒した一人の教授は「トランプ政権の行動は私の人生の中で学問文化に対する最も重要な攻撃である」とし、それに妥協した学長代行の対応を批判した。別の教員は、なぜ政府に対抗して訴訟を起こさなかったのかと迫った。

学長代行は「現在、本当に耐えがたく、勝ち目のない状況にある。私たちが取った行動は権威的体制に迎合した対応とみられている。私たちは何も変わっていない」と心情を語っている。同記事は「効果的に政治を乗り切るのを失敗したと攻撃するいら立った教員にとって、学長代行の説明は十分ではなかった」と書いている。

大学の自治はかくも脆弱なのだ。現在の大学経営は政府の資金に依存している。大学が経済的に自立していた頃の「古典的な大学の自治」は、もはや存在しないのだろう。

中岡 望 ジャーナリスト

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なかおか・のぞむ / Nozomu Nakaoka

国際基督教大学卒。東洋経済新報社編集委員、米ハーバード大学客員研究員、東洋英和女学院大学教授などを歴任。専攻は米国政治思想、マクロ経済学。著書に『アメリカ保守革命』(中公新書)。

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