トランプ政権の大学攻撃の本質と大学の矜持(中)政権に大幅譲歩した学長代行は辞任、コロンビア大学は完全降伏

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その約2週間後の2月27日、コロンビア大学では2024年4月の反イスラエル行動に参加した3名の学生が処分されたことに抗議し、50人以上の学生が大学の傘下にあるバーナード・カレッジの建物を占拠した。少なくとも10人の学生が逮捕され、キャンパスでの緊張が高まった。この事件を受け、共和党のジョンソン下院議長は『X』に「親ハマス派に大学での居場所はない。バーナード・カレッジとコロンビア大学はキャンパスの反ユダヤ主義を終わらせなければならない」と投稿した。

こうした状況に関してコロンビア大学は「私たちはトランプ政権とともに反ユダヤ主義と戦うのを楽しみにしている」という楽観的な声明を発表した。しかし、3月3日、司法省など3省からなる「反ユダヤ主義と戦うタスクフォース(以下、タスクフォース)」はコロンビア大学に対して5140万ドルの連邦政府との契約の凍結を検討している旨を通告し、3月7日には4億ドルの助成金の取り消しを発表した。そして、複数年で50億ドルの助成金も取り消す可能性があると示唆した。

助成金のために政権の要求を上回る譲歩

さらにタスクフォースは、3月13日にコロンビア大学に書簡を送り、9項目の要求を突き付けた。①学生に対して規律を求めること、②法務委員会を廃止し、学長権限を拡大すること、③授業、研究、キャンパス生活を妨げる状況を阻止する永続的かつ包括的な対策を講じること、④マスクやヒジャブ(スカーフ)着用を禁止すること、⑤暴力を振るった学生に対する調査と処分を行うこと、⑥反ユダヤ主義の定義を明確化すること、⑦大学の安全を確保すること、⑧中東・南アジア、アフリカ研究部が今後5年間、外部の監査を受けること(同部が反ユダヤ主義の温床だと見られている)、⑨学部の入学、国際的な採用、大学院の入学を連邦政府と政策を順守すること。いずれも大学の自治に関わる重要な要求である。

回答期限の3月21日、コロンビア大学が出した「コロンビア大学での差別とハラスメントと反ユダヤ主義を戦うための仕事を推進する」と題する声明にはタスクフォースの9項目を上回る17項目の方針が記されていた。中には「学生を排除、逮捕するために大学警官を36人雇用する」「公民権法順守のために強制的訓練を実施する」「教員採用に際して知的多様性を重視する(リベラル派に偏ることなく保守派の学者も採用するという意味)」「公立学校用の反ユダヤ主義などに関する対話を行う教材を無料で提供する」といった方針もあった。タスクフォースが求める以上の譲歩を行ったわけだ。

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