池袋に増殖する「ガチ中華」の知られざる大変貌。おなじみの東北料理、四川料理だけでなく本格的な江西料理、ウイグル料理も堪能できる時代に

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顧客である在日中国人のほうも、自分の出身地の料理が恋しいから、同郷の友人と一緒に食べに行くというケースもあれば、「中国に住んでいたときには一度も行ったことがなかったけれど、逆に池袋でなら手軽に食べられるから、日本で中国の〇〇地方の料理を初体験してみたい」という理由で訪れることもある。池袋に限らないが、東京のガチ中華は広大な中国と異なり、コンパクトにまとまっているので、さまざまな中華が食べやすいのだ。

実は、こうした現象は中国国内でも起きている。以前なら、北京に行ったら北京料理、上海に行ったら上海料理が、その都市で食べられるいちばん美味しい料理であるというのは当たり前の認識だった(日本人が大阪に行ったら、本場のお好み焼きを食べたいと思うのと同じ)が、人々の往来が激しくなったり、中国でも飲食チェーンが増えて、どの都市でも同じクオリティの料理が食べられるようになったりして、今では、その土地の地元料理以外にも美味しい店ができてきた。

ガチ中華が並ぶ池袋の路地裏(写真:著者撮影)

とくに広東省の深圳はその典型だ。全国各地から出稼ぎ労働者やITエンジニアなどが集まってきて、地元出身以外の人が多いため、全国各地の料理店がオープンし、そのクオリティが非常に上がっている、といわれている。

「行政書士事務所」「貿易会社」などの看板も

このように、東京、とくに中国人が多く集まる池袋でも、従来多かった東北料理以外のガチ中華が続々とオープンしている。それはまさしく、在日中国人の存在感が増していることに尽きる。

が、街を歩いていると、他にも気づくことがある。それは中華料理店が複数入居しているビルの中にたいてい「行政書士事務所」や「貿易会社」などの看板もあることだ。

そのネーミングから中華系の事務所であることが想像できる。池袋には中国人患者が9割以上を占めると言われる「三好医院」という中国人経営の病院もある。久しぶりに中国からやってきた中国人の友人のおかげで、「食」だけでなく、在日中国人の生活を支える経済圏(エコシステム)がこの街にすっかり出来上がっていることを、筆者は改めて実感させられた。

中島 恵 ジャーナリスト

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なかじま けい / Kei Nakajima

山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経て、フリ―に。著書に『なぜ中国人は財布を持たないのか』『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(すべて日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『「爆買い後」、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)など。近著には『中国人が日本を買う理由』『日本のなかの中国』(日本経済新聞出版社)がある。

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