池袋に増殖する「ガチ中華」の知られざる大変貌。おなじみの東北料理、四川料理だけでなく本格的な江西料理、ウイグル料理も堪能できる時代に

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東北料理店の老舗「永利」(写真:編集部撮影)

池袋が他のガチ中華の主要エリアと違う、と筆者が感じるのは、最も古くからガチ中華が出来始めたことだ。

真っ先に思い浮かぶのは、東北料理店の老舗「永利」という店。中華料理好きな日本人や、元中国駐在員の間ではよく知られている名店で、1998年に元中国残留日本人孤児が開いた。

かつては「ガチ中華といえば東北料理」だった

この店が繁盛したことから、周辺に「楽楽屋」など東北料理店が次々とできていき、それが池袋西口にガチ中華が集積するきっかけになった。

「楽楽屋」の東北料理。手前の揚げた豚肉に餡をかけた東北風酢豚(白)は1318円(税抜)だ(写真:筆者撮影)

旧満州があった東北地方は、中国では東北三省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)と呼ばれ、日本との縁も深い。そうした関係で、日中国交回復後の80年代から来日した人には東北出身者が多かったと言われている。

法務省の在留外国人統計(2011年)の出身省別で見ると、最も多いのは大連などがある遼寧省出身者で、次にハルビンがある黒竜江省、3番目は福建省、4番目が吉林省の順となっている(出身省別の統計は2012年以降、廃止されている)。そうしたこともあり、ガチ中華といえば東北料理が多かったという経緯がある。

だが、以前の日本では「日本風にアレンジした中華」が好まれる傾向があったため、東北地方出身者が作る東北料理の店であっても、メニューには四川省の麻婆豆腐もあれば回鍋肉もあるなど、特化されておらず、いわゆる「町中華」に近かった。

日本人は、たとえ東北出身の中国人が経営している店に行っても、「(メニューの麻婆豆腐を指して)これは東北地方の料理ではないでしょう?」などという人はほとんどいなかったし、〇〇(料理名)は〇〇(地方)の料理、といった中華料理の知識もあまりなかった。

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