楽天・三木谷社長は"牢屋"から飛び出した クリムゾンハウス始動で何が変わったか

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山田:土台ができた、ということは買収した会社も含めて、グループ内が一つのルールで統一されつつあるわけですね。

三木谷:それはほぼ完成しつつあると思います。

山田:ただし国ごとに違っている点はあるわけですよね? 法律の違いもあるので、完全に一緒にすることは難しい。

三木谷:多少は違いがあります。ただ、そうした違いがあった場合、今まではローカル・ファーストということでローカルのことを優先していたものを、そうではなく世界的な標準化を最優先にして進んできたということです。

山田:実は、そうすることによってかえってローカルの企業も仕事を進めやすくなる。グループ内がバラバラであれば仕事をしにくいに決まっていますから。

三木谷:そうです。そこが重要なポイントです。

シリコンバレーとは違う形の強い企業を作る

山田:例えばシリコンバレー系の会社は、「本社に従え」というスタンスだと思います。シリコンバレーのルールで進めるから支社はローカルのやり方を変えろ、と。しかし、楽天の場合は本社が変わろうとしているわけですよね?

三木谷浩史(みきたに ひろし)/1965年神戸市生まれ。88年一橋大学卒業後、日本興業銀行に入行。93年ハーバード大学にてMBA取得。興銀退職後、96年クリムゾングループを設立。97年2月エム・ディー・エム(現・楽天)設立、代表取締役就任。同年5月「楽天市場」を開設。2000年にジャスダック上場。12年6月に発足した一般社団法人新経済連盟の代表理事を務める

三木谷:そうしないとダメですからね。そもそも世界中のいろいろな人が集まっている「人種のるつぼ」といわれているアメリカの中でも、さらに最も国際化が進んでいるのがシリコンバレーです。日本とはまったく違う。日本は様々な文化が入ってきましたが、基本的には日本人が中心になっている国なので、成り立ちに大きな違いがあるわけです。

だったら、日本は世界で勝負できないのか、といったら、そうではない。僕は、『たかが英語!』という本でも書きましたが、例えばおもてなしのマインドセットであったり、あるいは一致団結の精神というものを国際化できたら、シリコンバレーとは違う形の強い企業が作れると真剣に考えているんです。

社内を歩けば分かりますが、「ここが本当に日本の企業なのか」というぐらい国際化されている。日本のサービスやっている部門も国際化しているため、ここで働いたインド人がインドに帰って楽天のサービス作る、という還流現象も起きてくる。これからは、それが楽しみです。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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