快進撃の「HANA」、時代を味方につけたガールズグループの真価。異例のオーディションから誕生、“口パクなし”、実力が示す存在感

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もちろん口パクをするかしないかだけで、優劣が決まるわけではない。グループのコンセプトやパフォーマンスの見せかたなど、諸々を考慮したうえで口パクが選択される場合もあるだろう。

だがHANAの場合、口パクをしない、という確固たる信念がある。その点がさらにHANAへの注目度を高めていると言えるだろう。

“いまの時代が待ち望んだガールズグループ”

オーディションの場につねに同席し、ずっと見守ってきたSKY-HIは、「ノノガ」は「時代に必要なことを形にできた」と自負する(『日経クロストレンド』2025年2月27日付記事)。

ここでいう「時代に必要なこと」とは、たとえば従来の芸能ビジネスのありかたを再考し、アーティスト本人をあらゆる面で尊重することと解釈できる。

「ROSE」のMVは韓国で撮影されたが、最年少メンバーのMAHINAが一部参加していない。一時的な体調不良になったためだが、健康への配慮を最優先する姿勢に新しい時代への意識が垣間見える。

また、いまの時代にガールズグループが果たすべき新たな役割を指した言葉でもあるだろう。

SKY-HI
SKY-HIが代表を務めるBMSGは4月16日、ビジネスカンファレンスを開催した(写真:株式会社BMSGプレスリリースより、撮影:ハタサトシ)

これまでのアイドルやガールズグループは、一瞬でも日常のつらい現実を忘れさせてくれる存在という意味合いが強かった。むろんそうした役割も大切だが、その意味では現実との距離があった。

一方HANAは、自分たちもつらい現実を共有し、それに立ち向かう姿を見せようとする。先ほど書いたように、「ROSE」はそうした強いメッセージがストレートに伝わってくる楽曲になっている。

HANAはガールズグループなので、まず向き合うのは現代における女性の生きづらさということになる。ルッキズムなど、女性であるがゆえの社会的偏見をいかに乗り越え、自由になれるか。だからこそ、HANAには女性ファンの多さが目立つのだろう。

とはいえ、社会全体がさまざまな困難を抱え、転換期を迎えている現在の日本社会において、生きづらさを抱えているのは女性だけではないはずだ。性別や年齢を問わず、それぞれの生きづらさがあり、悩み苦しむ人たちがいる。

そこから脱け出すためにも、いつの間にか心をがんじがらめにしてしまうネガティブな感情をポジティブな感情へと転換することがまず必要だ。その点、「No」を「Yes」に変えようとするHANAの存在と音楽は、性別や年齢に関係なく誰にでも響く可能性があるものだろう。

その意味で、HANAはまさに“いまの時代が待ち望んだガールズグループ”と言える。そしてHANAが放つメッセージの持つ普遍性は、グローバル化する時代のなかで日本だけでなく世界に届く可能性を秘めたものに思える。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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