"カイシャ君"はなぜ迷走する? 「働き方改革」「人的資本経営」「ワークライフバランス」…、"トレンドワード"に飛びつくより大事な事とは?

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しかし、不祥事を起こした会社の担当者が悪人かと言えば、そんなことはない。会社には経済合理性を追い求めるという「性質」がある以上、よほど厳密な法令遵守意識がないと、法律のグレーゾーンに足を踏み入れるリスクはつねに存在する。

会社に関わる私たちは、このことをしっかりと理解しておく必要がある。

「個人」ではなく「関係」に注目する

次に、組織とは何か? 難しいが、集団との違いで考えるとわかりやすい。

人が集まっているだけなら「集団」で、ある要件を満たしたら「組織」になる。

筆者が考える組織の成立要件とは、「共通の目的」「協働意思」「コミュニケーション」の3つである。

例えば、駅のホームで待っている人たちには、電車に乗って移動するという同じ目的はあるが、一緒に何かをやる協働意思や、互いに話すコミュニケーションはない。

一方、誰かがホームから線路に落ちてしまい、その人を救おうとする人たちは、その瞬間に「集団」から「組織」になる。線路に落ちた人を救おうとする人たちには、その人を救助するという共通の目的がある。

そのために協働する意思があり、目的と協働のために互いに話すコミュニケーションも自然と生まれる。そして、救助が完了したら3つの成立要件が失われるため、また「集団」に戻る。

このように、組織は恒久的なものではなく一時的なものであることから、組織を存続させようとするならば、「組織成果」と「個人の欲求充足」という2つの存続要件が必要だ。

ただ、組織的成果を最大化しようとすれば、個人が疲弊してしまうし、個人の意向に寄り添いすぎれば組織の成果は乏しくなる。2つの存続要件のバランスをとるためには、「One for All, All for One」の実現が不可欠だ。

「One for All, All for One」とは、日本語にすれば「個人は組織のために、組織は個人のために」である。このバランスを取ることが、組織が追求すべき普遍的テーマである。

また、組織の成果を創出するためには、前提として組織は「要素還元できない協働システム」であるという組織観に立つことが重要だ。

たとえば、5人のチームを見るとき、「5人の個人がいるチーム」ではなく、「5人の関係性が10本あるチーム」(5人×4人÷2)と見るのが、要素還元できない協働システムの意味するところである。

つまり、組織の構成要素である「個人」に注目するのではなく、「関係」に注目するのだ。

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