34歳のときに離婚した直美さんは共依存的な関係になりやすい母親や男性から距離を置き、経済的にも精神的にも自立することを決意する。東京に戻って現在の勤務先を見つける一方、自己啓発系の勉強会にも参加した。
「私は生い立ちが生い立ちなのでセルフケアがまったく足りていません。コーチングなどの手法を学んで、自分が本当にやりたいことを見つけたいと思いました」
その勉強会は学生から定年間近の人まで幅広い世代が参加しており、グループに分かれて朝活もして学び合うという内容だった。月2回の講座の後はグループの垣根を超えて食事に行くこともあり、直美さんは同世代の10人弱と親しくなった。そのうちの一人が、2歳年下の夫である邦彦さん(仮名)だ。
「勉強会でお互いの過去についても明かし合ったりしているので、関係性は自然と強くなります。コロナ禍で新しい人とは会いにくくなる中で、2人で食事に行ったりもしていました」
自分とは真逆のタイプ
出会った当時はお互いに恋人がいたことも直美さんにはよかったのかもしれない。最初から異性として意識する必要はなく、学び合う仲間として隣にいる邦彦さんを少しずつ好きになれたからだ。
「いつも飄々としている人です。怒ったりすることはなく、良くも悪くもこだわりがなく、常にポジティブ。私はこだわりが強い変な男性が基本的に好きなのですが、私自身もこだわりも強いので、彼のようなタイプと一緒に生活するほうがいいみたいです。私が変なことを言い出しても、寛容な彼は『いいね。それ、やろう!』と賛同してくれます」
結婚したのは2022年の年明け。直美さんの言う「変なこと」の代表例が、中国地方の山がちな場所への移住だ。邦彦さんは即座に賛成し、自分もフルリモート勤務ができる企業への転職を果たした。寛容にして優秀な人物なのだ。2024年の暮れに移住が実現し、一軒家を借りて保護犬を2人で可愛がっている。
「地域で果たすべき役割もありますが、よそから来た私たちにはできないことも少なくありません。自治会長さんが考慮してくれているので助かっています」
住民が少ない土地での一軒家暮らしは匿名性が低くなるが、直美さんはむしろ居心地の良さを感じているようだ。寂しい幼少期を過ごした彼女が長年探し求めていたことは「人とのつながりを感じられる暮らし」だったのかもしれない。
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