ウイルス変異?生活の変化?流行のピークがずれている「急性胃腸炎」で考えられること《ノロウイルス》対策がまだまだ必要なワケ
4月に入っても、ノロによる集団食中毒のニュースが報じられている。
富山市の寿司屋で集団食中毒が発生しており、静岡市内のレストランでもローストポークなどを食べた男性24人が下痢や嘔吐などの症状を訴えている。
例年の流行パターンと異なり、今年は年明けから春にかけて患者数が大きく増加した理由について、岡部医師は「何か1つのことが要因とは言えないが」と前置きしつつ、こう述べる。
「コロナ禍で感染を予防するために日常生活の中で注意してきた、手を洗う、マスクをするなどの行為が薄れてきたこと、一方で大人数での外食の機会が増え、人々が大きく移動したりするようになったことなどが考えられる」
さらに、これまで主流だったウイルスの遺伝子タイプが別のタイプのウイルスに置き換わったことなども要因の1つではないかという。
ノロウイルスの変異と流行
新型コロナやインフルエンザと同じように、ノロウイルスも変異しながら流行を繰り返している。岡部医師の説明によると、こうだ。
ノロウイルスはGI~GVという5つの遺伝子のグループに分かれていて、このうちヒトに感染するのは、主にGIとGIIの2種類。遺伝子のタイプから、GIはさらに9種類(GI.1~GI.9)に、GIIは22種類(GII.1~GII.22)に分類され、その中でも細かい変異が見られる。
2000年に入ってから、GII.4という遺伝子タイプが主に流行していたが、2015年にはGII.4が減り、GII.17という遺伝子タイプが出現。食中毒の事例で高い割合を占めるようになった。
さらに2016年にはGII.2という遺伝子タイプが子どもたちの間で流行。その後、GII.17の検出は少なくなり、GII.2がGII.4とともに主要な流行遺伝子タイプとなっていたという。
「今シーズンは、10年前に流行っていたGII.17が再び主流になってきています」(岡部医師)
細かい遺伝子分析がまだ十分にできていないため、10年前のGII.17と同じタイプなのか、新しく変化しているのかについては検討中だという。
このウイルスの変異しやすさこそ、ノロウイルスのやっかいな点だといえるだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら