こうした役割は、あるときはトルコ、あるときはインド、またあるときは中国にも当てはめられ、アジア的な野蛮を啓蒙する西欧人の使命(mission)を生み出し、西欧の世界支配の裏付けになったのである。
ヨーロッパの飛び地として発展していったアメリカは、この使命を受け継ぎ、西欧の代理人として西欧に代わる役割を負うことになる。西欧は、非西欧ロシアを敵視することで自らのアイデンティティを形成する。これが19世紀から21世紀現在まで続く反ロシアの実態である。
それは1917年ロシア革命によってツァー体制が崩壊して以後も続く、ロシアが民主的になったか社会主義的になったかはある意味どうでもよく、ロシアはアジア的野蛮の体現者として実体化され、西欧を浮き出させる役割を負わされた。もちろん、西欧とロシアとの仲が深まると、ときに中東や中国などがその反面教師の役割を代行する。
トランプはBRICS体制を壊す?
21世紀社会の激変の中、西欧社会の地盤沈下は著しい。そうした中、今ではアメリカをもってしても西欧優位を堅持するのは、厳しい状況だ。BRICSがG7の前に立ちはだかっている現在、BRICSを壊すしか逃げ道はない。
BRICSにあっては、今のところ主として社会主義時代を引きずる形でロシアと中国がその中心である。世界の力関係から見て、今世界はアメリカ、ロシア、中国の超大国によって牛耳られているといえるかもしれない。ロシアと中国がBRICSにおり、なおかつ次の超大国インドまでそこに入っているとすれば、G7の勝ち目はない。
トランプは、大きな賭けに出たのかもしれない。1期目の2017年に北朝鮮に接近したのと同様、ロシアに近づきBRICSをBICSに引き裂くことで、西欧を形作ってきた、反ロシアという構造をいったん脱構築するつもりなのだ。
これで北極海は完全に手中にできる。カナダ、グリーンランドを手中にし、温暖化の中で優勢に経済を発展させるつもりかもしれない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら