成熟社会の経済学 長期不況をどう克服するか 小野善康著 ~需要不足の日本における本当のムダとは何か

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著者によれば、「これまでとはまったく違う発想が成熟社会では求められ……採算を度外視してでも、社会的に役立つ分野に政府が支援をして雇用を創っていくこと」が必要になる。政府の不採算事業をめぐっては政権交代後も「無駄だからやめるべきだという主張」が健在だが、著者は逆に「政府が収益を生む事業を行ったら、それこそ民業圧迫」だと批判する。経済全体から見た最大のムダとは、生産力が余っているのに非自発的な失業が存在し「物やサービスの意味で便益が失われている」ことであり、「無駄なお金がかかるというのは本当の無駄ではなく、誰が払い誰がもらうかという分配の問題にすぎない」と喝破する。

もし著者の議論が極端に見えるなら、未だ発展途上社会の発想に浸かっているからではないか。成熟社会ではおカネを節約すれば、市場の調整によってより効率的な事業におカネが回るのではなく、失業というより大きな無駄が拡大することを見落としてはならないのである。

おの・よしやす
内閣府経済社会総合研究所長、大阪大学フェロー。専攻はマクロ経済動学、国際経済学、産業組織論。1951年生まれ。東京工業大学工学部社会工学科卒業。東京大学大学院経済学研究科修了。武蔵大学、東工大、大阪大学社会経済研究所などを経る。

岩波新書 798円 209ページ

  

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