「黒田バズーカ第3弾はない」と言える理由 市場が期待する一段の金融緩和策はあるのか

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このように、円安でも輸出増というメリットが生じていないが、円安による輸入価格の上昇で、加工食品などが値上がりし、消費者マインドを冷やしているという指摘がなされている。

すなわち、日本にとって、足元では円安のデメリットが勝りつつあるわけで、加えて米国が米ドル高に神経を尖らせているとすれば、日銀が為替市場への影響を意図するにせよしないにせよ、追加緩和を行なって円安が進む事態は好ましくない。もちろん大幅な円高になっても困るのだが、円安も引き起こしがたいとなれば、日銀は、10月6日(火)~7日(水)の金融政策決定会合でも、その先でも、現状維持を選択するだろう(いわゆる「黒田バズーカ第3弾」は見送られるだろう)。

もともと、いつまでも金融政策に依存し続ける状況が不健全であり、他の経済政策にバトンタッチすべきなのだが、次のランナーがなかなか現れない状況だと言える。

依然として「徳川家康」のごとく我慢の日本株

考えてみれば(考えてみなくてもわかるかもしれないが)、一発で景気がすさまじく回復し、株価が暴騰するような対策、といったものはありえない。

筆者はそうした策は思いもつかないが、「きっと安倍政権が考えだしてくれる」、などという望みは持たない方がよい。地道に、各産業分野でコツコツとさまざまな策(たとえば都市インフラ輸出の振興など)を政府が積み上げ、一方で自律的な景気回復や企業の自助努力による収益の持ち直しを、待つしかないだろう。したがって、まだまだ「二進一退的な相場」を覚悟せざるを得まい。

前回のコラム「日本株、大型連休後はどうなるのか」でも「徳川家康ではないが、重荷を背負って遠き道を行くがごとく、将来の果実を楽しみにしよう」と書いた。海外に目を転じても、中国経済等の不安も依然簡単には消えそうもないし、結局、今週の日本株はこの「家康状態」から抜け出せそうもない。

ただし一方で、株価を底抜けさせるような、新規の悪材料も見出しにくい。今週の日経平均株価は、底値圏の形成から慎重に上値をうかがう時期だと考え、1万7600~1万8200円を予想する。小幅だが1万8000円台を再度奪回する見通しだ。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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