よそ行きの服を着て去っていった母…《朝ドラ あんぱん》モデルの「やなせたかし」が幼少期に経験した"母との別れ"
母が再婚して立ち去ったことで、やなせは伯父の家で弟の千尋と一緒に暮らすことになった。
しかし、すでに伯父の家の子どもとなっている千尋のように、伯父・伯母夫婦に思いっきり甘えることは、やなせにはできなかったようだ。弟の千尋と同じように「お父さん、お母さん」と呼ぶようにはしたが、どこかで引け目があったという。
それでも「お兄ちゃんと一緒じゃなきゃ嫌」と、どこにでもついてくる弟・千尋の存在は、かけがえのないものだった。ニュートンの場合は、両親がいないことだけではなく、友達もいなかっただけ孤独は深かった。弟の千尋と外で思いっきり遊ぶ日々は、やなせの鬱屈した気持ちをいくらか晴らしてくれたことだろう。
伯父の家に移り住んだことで、やなせは小学校を2年生の途中で転校することになった。転校先では、成績はいつも一番で級長になったが、運動が苦手だったため、目立った存在ではなかったようだ。
そんなやなせが輝いたのは、やはり絵を描くときだった。やなせの絵のうまさはあっという間にクラスに知れわたったようで、同級生たちがノートを手に「お嫁さんを描いて」「ぼくは軍艦の絵!」と次から次に頼みに来たという。
絵はいつだって、自分の居場所を作ってくれる――。やなせはそんなふうに実感したのではないだろうか。
中学で待ち受けていた暗黒の日々
やなせは小学校を首席で卒業すると、高知県立高知城東中学校(現:県立高知追手前高校)へと進学する。この学校の前身は、伯父と父が学んだ高知県立第一中学校だ。
自分の家族と縁がある学校での新生活に、期待を胸に抱いていたことだろう。だが、この中学生活こそが、やなせにとって暗黒時代の始まりであった。
【参考文献】
やなせたかし『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)
やなせたかし『ボクと、正義と、アンパンマン なんのために生まれて、なにをして生きるのか』(PHP研究所)
やなせたかし『何のために生まれてきたの?』(PHP研究所)
梯 久美子『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』 (文春文庫)
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