『りんごかもしれない』など≪10年で30作品≫を生んだベストセラー絵本作家・ヨシタケシンスケさんが語る、意外な”創作の原動力”
──では、仕事に限らずヨシタケさんがコミュニケーションにおいて最も大事にしていることはなんですか?
怒られないことです(笑)。自分にはいかに非がないかを証明するか。その一点にかけています。自分のミスも、ミスだと思わせたらいけないんですよ。
──演奏家やパフォーマーの方がよく言いますね。「ミスした」ということは、おくびにも出さずに堂々としてろと。
その精神は僕らでも使えるんですよ。たとえば、レストランで働いていて、フライドポテトの材料を切らしちゃったとして、ここでなんて言うか。
「ポテト切らしちゃったので、今買いに行ってます」と正直に言ったら「このお店はなってないな」と思われるからダメじゃないですか。ここは「揚げたてをお持ちいたしますので、10分少々お待ちいただけますか?」と言ったほうがいい。そしたらお客さんも「それなら仕方ないか。楽しみだな」って思えますよね。ここの言い換えができるかどうかってすごく大事なんですよね。
ヨシタケ作品は、言い訳の集大成
──ただ正直に事情を説明すればいいわけじゃないっていうのは、たしかに重要ですね。
その言い訳の集大成が僕の本ですから。今回の展覧会では、7500枚以上のスケッチを天井高く壁に貼り付けたんですが、あれは家族に叱られたときに気を紛らわせるために描いているんですね。これまでの巡回展では2500枚程度だったんですが、その3倍近くあると。これだけ僕のなかにストレスがたくさんあったんですね(笑)。



──ネガティブな気持ちが、創作の原動力になっている。
そうですね、自分の心配ごと、日々のしんどさを経費にして本を作ってるといいましょうか。
たしかに平和なときにはこんなスケッチは描かないから、ストレスがなかったら何も生み出せてないかもしれません。
たまに「ヨシタケさんの本は優しい」と言ってもらえるんですけど、本当は「責められたくない」という後ろ向きな気持ちだったり、日々のストレスを積み上げて作ったものなんです。
だから「優しい」と言われると不思議な気持ちになる。
──ヨシタケさんが優しいものを描こうとして、優しい絵本ができているわけではないと。
はい。これをもっと突き詰めて考えると、「優しさ」って優しさだけでできてないんじゃないかなと思うんです。いろんな材料で優しさは作れる。これは絵本を描き始めてから気づいたことです。
もっと言うと、僕はなかなか世の中を信じられないんですが、そんなひとが、世の中を信じたくなるような物語を作れるのか。それが今の大きなテーマです。よく、「人殺しの経験がなくても、ミステリー小説は書ける」って言いますけど、だったら世界を信じていないひとでも、読者が世界を信じたくなる本は作れると思うんです。僕のようなネガティブなことしか考えてない人間が、ひとを救うことは果たして可能なのか。そこを追求してみたいですね。
2025年6月3日(火)まで
東京・CREATIVE MUSEUM TOKYO
(TODA BUILDING 6階)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら