『りんごかもしれない』など≪10年で30作品≫を生んだベストセラー絵本作家・ヨシタケシンスケさんが語る、意外な”創作の原動力”

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──すごくわかりやすくて、腑に落ちます。

こういうことをグチグチ考えるのが好きなんですよね。一度考えて言語化すると、改めて言葉として取り出すときに、わかりやすいし、早いんですよ。今の話もこうやってスラスラ話せるようになるまで、何度も何度もグチグチ考えてきました (笑)。

でも人との関係性についてこうやって理屈っぽく考えていっても、行き着く先はいつも同じで。

──なんですか?

「人間は理屈で生きてない」ってことです(笑)。みんなが理屈通りに動いてたら、世界はこんなことになってないですから。でも、ひとは感情と理屈のハイブリッドで日々ゆらぎながら生きていると思えれば、「まぁ、そんなこともあらぁな」って、ある程度のことは受け入れやすくなります。

そもそも言葉って不確かですよね。たとえば僕は「逃げる」や「諦める」といったワードをすごくポジティブに捉えていて使うけれど、どうやら一般的にはそうではない。同じ言葉でも解釈がまったく異なるし、コミュニケーションのルールブックも人の数だけある。こんなにもバラバラなのに、ある程度はコミュニケーションができていることがむしろ奇跡で、すごいことなんじゃないかっていう気持ちなんですよね。

著者が“悪役”を引き受けるとき

──たしかにそうですね。

といっても、ここで身も蓋もないこと言ってしまうと、仕事って究極的には人と人との相性なんですよね。だからコミュニケーションがどうしても合わない場合は、関係性を解消することも必要だと思います。

あるプロジェクトに一流の人たちが集まったからといって、いいものができるとは限らない。みんなが最善を尽くしているのに、誰も幸せにならない現場って、社会人なら誰しも経験があると思うんですけど。

──あまり思い出したくはないですが……(苦笑)。

僕もこうやって自分でいろいろ選べる立場になっても、2〜3年に一度は「しまった〜、これは相性のやつだ……」って案件にぶつかります。そういうときは、ちゃんとストップをかけたほうがいい。こういうときに「この関係を終わらせましょう」って言えるのは僕だけなんだって、あるときに気づいたんですね。

たとえば本づくりだったら、編集者は「これやめましょう」とはなかなか言えません。だから著者が言うしかないんです。この業界にいると「著者がわがまま言って頓挫しちゃったよ」みたいな話って、それなりに聞くかもしれませんが、それって本当にわがままのケースもあれば、そうせざるをえない局面で著者が身を切った場合もあるんですよね。

どんなプロセスを踏もうが、最終的に世の中に残るのは商品だけ。だから最終的な商品に責任を持つため、ときには悪役に徹して案件を終わらせることも著者の仕事なんだと今ならわかります。

展覧会のプレス向けイベントには多くのメディアが集まった(撮影:梅谷秀司)
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