すき家《ネズミ混入》はなぜここまで騒動に? それは「安くてうまくて安全なメシ」くらいしか誇れないほど、日本人が貧しくなっているから

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かつて日本は、自動車や電子機器、家電などによって世界市場を席捲し、人々はその技術とブランドに誇りを持った。けれども、経済が衰退局面に入り、ものづくりが凋落し、2022年にはGDPがOECD(経済協力開発機構)加盟国38カ国中21位となり、G7で最下位になった。

一方で、日本はクールジャパンに代表されるようにアニメやマンガなどの文化的なものによる巻き返しを試みた。2030年までに訪日外国人旅行者数を6000万人まで増加させる目標を掲げた政府の観光立国化の推進はその一つだ。流行語になった「おもてなし」が象徴的だが、技術立国から「文化立国」に舵を切ったのである。エンターテインメントとインバウンドによる消費拡大を促す方向性だ。

しかし、これは少し引いたところから見てみると、経済的に上向きになることが期待できないなかで、どうにかして「ありもの」を生かそうとする戦略なのである。

何か新しいものを創造するというのではなくて、すでにある良質なコンテンツを発掘するのに近い考え方といえる。今風に表現すれば、「コト消費」(体験や経験を重視する消費行動のこと)としてのブランディングである。

これは、先の「町中華」にも当てはまるが、以前から街中にあった古びた大衆食堂や喫茶店が「昭和レトロ」の文脈で評価し直され、従来とは異なる客層が掘り起こされるのに非常によく似ている。個人レベルにおいても同じような動機がうかがえる。低成長時代にからめ取られ、いい展望が描けないため、内なる世界を探索する旅に出るのである。

日本には世界に比肩する、いや世界を圧倒する食文化という体験コンテンツがあることを再確認し、かつそのコンテンツを心ゆくまで堪能するというわけだ。この旅はアウトバウンド(海外旅行)と異なるお手軽なもので、胃袋と自尊心の両方が満たされる。

幸せホルモンを簡単に得るなら「美味しい食事」

このようなスタンスは、「日本の料理を絶賛する外国人」に関する記事や動画などに対する反応にとりわけ如実に表れている。日本に旅行に来た外国人(特に欧米人)ユーチューバーなどがとんかつやパンケーキなど、日本独自のグルメを堪能して狂喜している様子を映した動画が頻繁に鑑賞され、シェアされている。

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