「いつヤバいの?」「今でしょ」 東大合格レベルに到達した「ChatGPT」に奪われかねない"予備校の未来"

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また、学科の内容について教えるだけでなく、進学指導的なサービスを提供することも考えられる。つまり、試験を行ってその成績から目標校の合格確率を教えてくれたり、あるいは目標を変更したほうがいいことを提案する。どうしても目標を達成したいのであれば、これからどの程度勉強を強化する必要があるかを判定することも考えられる。

これに関する大量のデータを持っている予備校であれば、こうしたサービスの提供が可能だろう。また、進学指導に特化したアプリが提供されることも考えられる。

ただし、これらが伝統的な学習方法を完全に置き換えるとは限らない。教育は知識の習得だけでなく、社会性や対人スキルの育成も目的としている。AIによる指導がどこまでこれらをカバーできるかは、今後の研究や開発次第だ。

また、成績が良くなったことを認められたいというのは、教師に認められたいとか、友人たちの間で認められたいということだ。AIに認められてもうれしいとは思わない。だから、学校での集団教育がなくなるとは思えない。しかし、塾や予備校に関する限り、今後かなり大きな地殻変動が起きるだろう。

資格試験やリスキリングへの適応も

ChatGPTチューターがリスキリング(学び直し)や資格試験の準備を支援する潜在能力を持っていることは間違いない。したがって、入学試験だけではなく、資格試験についても個々の試験内容に即したChatGPTチューターが現れるだろう。

重要なのは、個々のニーズに対応するためのカスタマイズだ。現在のウェブ講座は一方通行だ。質問も十分にできない。また、個人個人に合った勉強ができるかどうか、わからない。こうした点が改良されれば、リスキリングを行うことが非常に容易になるとみられる。そして、リスキリングをめぐる環境は一変すると想定される。

さらに、進路指導的なサービスも考えられる。例えば、問題を解かせる。それを採点して「合格レベルまで、あと何時間程度の勉強が必要」という評価をする。このようなサービスは比較的簡単にできるはずだ。人間が計算するのでは大変だが、システムを作っておけば自動的に計算でき、実際のデータを考慮しながら精度を上げていくことができるだろう。

日本では退職氷河期の世代でリスキリングへの需要が極めて強いと思われるので、それに対応したサービスが多数出てくる可能性がある。企業がそれを購入して従業員に提供することも考えられる。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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