国家によるグローバル化から都市・地域でのグローバル化こそ日本経済復興のカギとなる

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日本海や東シナ海など、アジアの海はヨーロッパにとっての地中海ともいえる。そこには元来、都市や地域を拠点としたグローバルネットワークが存在していた(写真・Juanmonino/Getty Images)

『アジアの地中海 16世紀から21世紀』(François Gipouloux, La Méditerranée Asiatique XVI-XXIsiècle,CNRS,2006)という本がある。その内容を紹介すれば以下のようになる。

〈アジアの日本海から東シナ海、黄海、南シナ海は、地中海に似ている。それらの地域の海岸線は、昔から船が往来し、繁栄を極めていた。地中海は紀元前からの繁栄の歴史があるように、アジアにおいても同等の繁栄の歴史があった。19世紀にヨーロッパがこれらの地域を植民地化によって寸断したが、いまや再び元に戻り繁栄への道を進み始めている。この地域では、ヨーロッパ型の国民国家はあまり機能せず、漠然とした海洋都市国家の連合を形づくっている。それは、商業で結びついた国民国家を超えるものである〉

アジアに生じた新しい潮流

こんなことはあえてフランス人から言われる必要もないことなのだが、フランス人ですら、アジアの特徴をつかんでいることが重要だ。そこで言われていることは、ヨーロッパ型の国民国家の概念を超えるものがアジアにはあるということだからである。

わが日本は明治以来、国民国家の概念を西欧から輸入し、アジア地域の中で唯一抜けだし、アジアの雄になってきたのだ、今やそのアジアで国民国家であるがゆえに孤立し、繁栄に乗り遅れている。

発展しつつあるアジアが、海洋国家として、海の環として再び繁栄を取り戻しつつある今、日本は再びその環に戻ることを真剣に考えたほうがいいのではないだろうか。

この書物の中に、ミシェル・トリピエの『アルキメデスの王国』という書物から引用された言葉がある。

〈オランダ連合王国が発見した真の富は、ジパングの金ではなく、港から港へさまざまな貨物船を動かすことによって得られる利益であった。〉(前掲書、414ページ)
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