東京電力・偽りの延命、なし崩しの救済《3》--料金値上げ、原発再稼働
一方、規制部門の料金をめぐっては、2月中にも、その前提となっている「総括原価方式」を見直すべく、政府の専門委員会で議論が進んでいる。総合計画に盛り込む料金値上げはこの結果を反映するため、値上げ幅は限定的になると目される。
最終的に値上げ認可を出す枝野経産相は、安易な値上げに対しては難色を示しているものの、自由化部門の値上げが4月に予定どおり実施されれば、規制部門でも値上げできる下地となるのは間違いない。
片や、先が見通しにくいのが原発の再稼働だ。
現在の東電の料金設定の基本は中越沖地震後に見直されており、「福島第一・第二原発全基が止まっても、柏崎刈羽さえ動かせれば、値上げせずとも東電は利益を出せる」(大手国内証券アナリスト)。逆にいえば、柏崎刈羽の再稼働なくしては、東電の黒字化は絶望的だ。
政府は目下、各原発のストレステスト(耐性検査)を実施中。1月下旬には、原子力安全・保安院が関西電力・大飯原発3、4号機に対して、テストの結果が「妥当」であるとの判断を初めて下した。再稼働に向けての下準備は着々と進んでいる。
ただし、再稼働で有力視されるのは大飯原発に加え、四国電力・伊方原発、北海道電力・泊原発。いずれもPWR(加圧水型軽水炉)であり、柏崎刈羽のBWR(沸騰水型軽水炉)とは炉型が異なる。
「新生東電」を率いる新たな経営者を模索する動きもある。一時は経産省から人材を送る計画も浮上したが、「監督官庁の人間が経営を担うことはありえない。本命は民間出身者」(政府関係者)「コストを下げて、資金調達もできる人を外部から引っ張ってくるのが望ましい」(第三者委員会委員)。有望視されているのは、原賠機構の運営委員である葛西敬之・JR東海会長だ。「政府がカネを入れるところにJR出身者を採用するのには一種のノウハウがある」(野村証券の魚本敏宏チーフ・クレジット・アナリスト)。ただし、電力自由化論者の元経産省次官など、さまざまな名前が浮かんでは消える。