東京電力・偽りの延命、なし崩しの救済《3》--料金値上げ、原発再稼働
原子力損害賠償支援機構が策定したスキームに欠かせないのが、規制部門の電力料金値上げと原発再稼働である。というのも、機構がいくらカネを突っ込んだところで、東電が自力で稼げない以上成り立たないためだ。金融機関にしても、赤字を垂れ流し続ける東電に追加融資をするのは考えられない。
東電と原賠機構の前身である「東京電力に関する経営・財務調査委員会(第三者委員会)」が10月にまとめた報告書でも、この二つなくしては東電の債務超過は避けられないと試算している。
値上げの地ならしはすでに始まっている。自由化部門の値上げがそれだ。
東電は今回、12年3月期に見込まれる燃料費の増分約6900億円に対して、合理化策によるコスト削減分を差し引いた分を、値上げによって賄う方針。数字にすると、平均17%程度の値上げとなる。規制部門の料金値上げは経産大臣の認可が必要なのに対して、自由化部門は事業者が自ら料金の上げ下げを決められる。昨年12月の会見でも西澤社長は「値上げは事業者の権利」と言ってはばからなかった。
だが、東電の想定以上に、行政の反発は大きかった。1月26日に東京都が「値上げの根拠が不透明だ」として情報開示を求める要望書を東電などに提出。31日には古川元久・国家戦略担当相が西澤社長を呼びつけ、中小企業に対する値上げ幅の見直しなどを求めた。翌2月1日、今度は東電幹部が東京都に呼び出されるなど、“説明行脚”が続いている。
3月で原発ゼロ 再稼動には「悪条件」
興奮する行政を尻目に、産業界は驚くほど静かだ。
一部の業界団体を除けば、大きな反発の声は聞こえてこない。そもそも、自由化部門は相対取引で、電力料金は企業ごとに異なる。「大口顧客には、1キロワット/時当たり数円という安値で電力を供給しているのではないか」(国会議員)といぶかる向きもある。だとすると、事を荒らげるより、17%の値上げを許容したほうが得策と考えていても不思議ではない。