東京電力・偽りの延命、なし崩しの救済《1》--攻める経産省、抗う東電

国有化は、何も今回初めて登場するスキームではない。福島第一原発事故が起きた直後にもしきりに取りざたされた経緯がある。

事故後、東電は金融機関から2兆円の緊急融資を受け、当面の運転資金を確保することはできた。が、問題となったのは、兆単位とも目された損害賠償費用だ。単年度で特損処理すれば、巨額の最終赤字に転落し、当時3兆円弱あった純資産が「瞬間蒸発」する可能性もあった。

債務超過危機を前に、法的整理論や解体論が飛び交う中、東電破綻による債権放棄をおそれた金融機関を中心に、「東電救済スキーム」が浮上。4月には原賠機構の骨子がほぼまとまり、8月には原子力損害賠償支援機構法が成立した。

原賠機構の下で、政府は東電に対して、賠償金の資金を援助するほか、通常の運転資金などを支援する枠組みも整えられ、東電はひとまず、救われた。

その後、10月には、東電の合理化策を盛り込んだ「緊急特別事業計画」(緊急計画)が策定される。今回の総合計画を待たずに、資金援助を受けられることになった。

ところが、この頃から「不都合な事実」が次々と明らかになる。

一つは廃炉費用だ。東電は、前期末時点で福島第一1~4号機にかかる廃炉費用として約6300億円を計上したが、これはあくまで最低限との見方が大勢だ。

もう一つは何十兆円とも試算される除染費用である。

損害賠償にかかる費用は原賠機構から注入されても、こうした巨額の費用は、基本的に東電が負担することになっている。除染費用が損害賠償として原賠機構の資金援助を受けられるかは決まっていない。その額次第では、東電は再び債務超過の危機に瀕するおそれが出てきたのだ。そこで、国有化スキームが再び、スポットライトを浴びたのである。

(週刊東洋経済2012年2月18日号より)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。撮影:今井康一
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