東京電力・偽りの延命、なし崩しの救済《1》--攻める経産省、抗う東電
60年間灯し続けた民間の明かりがついに消滅する──。
東京電力の「国有化」へのカウントダウンが始まった。3月にも東電と、東電の運営を支援する原子力損害賠償支援機構(原賠機構)が取りまとめる「総合特別事業計画(総合計画)」。東電の今後10年間の見通しを示す重大計画の策定が大詰めを迎える中、関係者の間で激しい攻防が繰り広げられている。
「経営権も何も、民間と国営なら民間のほうがいいに決まっているじゃないか」
2月3日、原賠機構の定期的な協議の場である「運営委員会」が第9回目の会合を開いたその夜、東京電力の首脳は語気を強めてこう言い放った。折しも、運営委で東電に対する6900億円の追加資金援助を決めた後である。
これまで月1回のペースで開かれてきた運営委だが、1月は一度も開かれなかった。東電が、政府や原賠機構に相談なく、4月からの自由化(法人)部門の値上げを発表したことを問題視した枝野幸男・経済産業相が開催中止を要請したのだ。
「事前報告がなかったのは、極めて遺憾だ」
数日遅れて開かれた運営委では、下河辺和彦委員長が東電の西澤俊夫社長に不快感をあらわにした。
東電側の見方は違う。
「機構側が、どうしてこんなにリーク記事が出るんだと腹を立てて、中止を申し入れたと聞いている」(東電幹部)
「東電に1兆円公的資金投入」「東電の火力発電所を分社化」「3年間で黒字へ」--。確かに、年明け以降、総合計画に関する報道が連日のように続いている。