「芸術」と「わいせつ」、その境界線はどこに? 世界的に評価される「春画」は、わいせつ物か
男女の性愛を描いた春画をテーマとした国内初の「SHUNGA 春画展」が9月から12月まで、東京・目白台の美術館「永青文庫」で開催されている。
春画は、江戸時代を中心に発展した、日本人の性風俗を描いた絵画。海外では、2013年の大英博物館での「春画展」が好評を博すなど、春画の芸術性が高く評価されており、今回の展覧会も注目を集めている。
一方、春画は、エロティックな描写が多く、男女の性器が露骨に描かれているものもある。そのため、展覧会というパブリックな催しは異例で、今回の春画展も、18歳未満は入館が禁じられている。
これまで、性描写が過激な作品は「わいせつ物」にあたるとして、たびたび刑事裁判の対象とされてきた。春画についてはどうか。「わいせつ物」にあたる可能性はないのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
その時代の社会通念として判断
「『わいせつ』について、判例は『いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義に反するもの』と定義しています(大判大正7年6月10日、最判昭和26年5月10日)。
もっとも、この概念は、その時代や場所の社会通念によって変わる可能性があります。
また、『ポルノか芸術か』という議論がよくされますが、判例は、芸術作品であっても、わいせつの文書として扱うことは差し支えないともいっています(『悪徳の栄え』事件。最大判昭和44年10月15日)」
芸術作品でも「わいせつ物」と扱われる可能性があるというわけだ。春画については、どう考えればいいだろうか。