「仕事中に居眠り」する社員の"副業や兼業" もめずに禁止・制限するために必要な「プロセス」とは
それでも受診しない場合には、不完全な労務提供を受け取る義務は会社にないことから、受診命令を発令し、受診をして問題ないとわかるまでは労務提供を受け取れない、賃金は支払わないという対応にならざるを得ません。
前述のとおり、労働安全衛生法66条5項において、社員には健康診断を受けることが義務付けられています(ただし、事業者の指定した医師または歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師または歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでありません)。
したがって、健康診断を拒否する場合、会社としては健康診断を受けるように命じ、それでも拒否する場合には、会社として労働者の安全を確認できない、安全配慮義務を尽くせないことを理由に、労務提供の受領を拒否する対応を検討せざるを得ません。
同じく、健康診断の結果から治療が必要であるにもかかわらず治療をしない場合で、その治療を放置することで労務提供に支障が生ずるような場合も、会社としては繰り返し治療をするように求め、場合によっては治療をしていることが確認できないと(診断書等を提出しないと)、就労をさせないという措置を講ずることも検討せざるを得ません。
なお、サンセイほか事件(横浜地判令和2年3月27日)では、健康診断後の治療をしていなかったことや、会社に受診していると虚偽の事実を述べたこと等の社員側の対応が、最終的な死亡の結果に一定程度寄与したとされ、損害賠償額が減額されています。
「療養専念義務」とは
自己健康保持義務とは少し異なりますが、労働者が疾病等により労務提供できなくなった場合に、療養に専念する義務のことを「療養専念義務」といいます。
疾病が私傷病による場合、労働者は、雇用契約に基づく労務提供義務を自己の都合によりできない状況、すなわち労務提供義務の不履行の状態になっています(有給休暇その他の法律上認められた休暇を取得するときは別です)。
このような状況において、会社が休職命令を発令するなどして、一定期間の療養を認めるようなケースでは、労働者においては、療養に専念することでなるべく早く回復して復帰することが求められます。
したがって、労働者は、休職期間中に、疾病が悪化したり、回復に反するような行動をしないことが求められます。