上昇する金価格がどこかで止まる懸念はないのか 最高値更新の可能性の一方で一時的に暴落も?

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もう1つは、株式市場がこうした先行きが不透明な状況に耐えきれなくなり、株価の大幅な調整が始まるという展開である。アメリカのインフレ懸念などとも相まって、トランプ関税が最悪の結果をもたらすというシナリオだ。

株価が急落する局面では、安全資産としての金に対する需要は、必ずしも強まるとは限らない。繰り返しになるが現時点で金に対する買いを呼び込んでいるのは、あくまでも先行き不透明感の高さであり、戦争など最悪のシナリオに行き着くという悲観的な見方によるものではないからだ。

「株価急落+スタグフレーション懸念」なら一時急落も

実際、株価が本当に大きく崩れる局面においては、金は安全資産としてではなく、日々価格が変動するというリスク資産と見なされることが多い。

例えば、2000年初めのハイテクバブル崩壊、2008年のリーマンショックの際もそうだった。株価が崩れ始めた当初こそ金には買いが集まっても、その後は株価を追うように売りが加速、最後は株価以上の激しさで値を崩す格好となっている。

金に対して安全資産としての需要が集まっているときというのは、株式市場がそれなりに健全さを維持し、あくまでもリスク資産の中でどの投資先に資金を移そうかという選択肢が、しっかりと機能しているときだけなのである。

現在、アメリカの株価はトランプ関税に加え、AIバブル崩壊やスタグフレーション(景気停滞の中でのインフレ)懸念が台頭、株価の値動きが激しくなっている。今後株価下落に歯止めがきかなくなり、すべてを現金化すべき(キャッシュ・イズ・キング)という動きが加速するに至れば、金市場からも資金は一気に逃げ出していくことになるだろう。

もし、株価急落とアメリカ長期金利の上昇の両方が悪材料視されることがあれば、金価格は一時的に1トロイオンス=2000ドル程度の節目近辺まで一気に値を崩すことがあっても、何ら不思議ではないとみておいたほうがよいだろう。

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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