米中に出遅れ「日本のスマートホーム」普及のカギ データ連携サービスで大企業がタッグを組む訳
今年1月にアメリカ・ラスベガスで開催された世界最大級の情報技術展示会「CES」でスマートホームの最新動向を調査した新貝氏によると、IoT機器ベンダーによるMatter対応が拡大する一方で、セキュリティ対策の強化が最大の関心事になっていたという。日本でも、3月からIoT機器のセキュリティ要件の適合評価を示すラベリング制度「JC-STAR」がスタートし、セキュリティ対策の強化が図られることになった。
パソコンやスマホの場合、利用者はセキュリティソフトをインストールし、バージョンアップで機能更新しながら対策している人が多いだろう。しかし、家庭に設置されている無線ルーターやウェブカメラなどのIoT機器は、購入時のパスワードを設定したまま使用される場合が多く、バージョンアップ機能も装備されていない。このため、家庭用のIoT機器がサイバー攻撃の対象となり、第三者によるウェブカメラの乗っ取りや不正アクセスなどの被害が報告されている。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、2月に公表した「NICTER(インシデント分析センター)観測レポート2024」によると、2024年に観測されたサイバー攻撃関連通信は前年に比べて11%増加。日本国内では1日当たり約2600台のIoT機器がウイルスなどのマルウェア(悪意のあるソフトウェア)に感染している。こうした被害を防ぐために経済産業省では2024年8月に「IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度構築方針」を公表し、情報処理推進機構(IPA)が「JC-STAR」制度を立ち上げたわけだ。
JC-STARのセキュリティ水準は4段階に分かれ、3月にスタートするのは最低限の脅威に対抗できる評価の★1で、IoT機器ベンダーが自らが適合宣言することでラベルを貼ることができる。★3と★4は評価機関による第三者認証が必要で、高いセキュリティ要件が求められるスマートヘルスケア向けIoT機器などでの取得を想定。同様の取り組みが進んでいるシンガポール、英国、アメリカ、EUなどの担当機関とは相互認証に向けた交渉を進めている。
前出のライフエレメンツ木村社長は「JC-STAR制度の導入で、消費者に安心してスマートライフサービスを利用してもらえるようになる」と期待する。スマートロックなどのIoT機器を提供するライナフの滝沢潔代表取締役も「JC-STARの★2以上のラベル付与は今年度下期以降になるようだが、できるだけ早期に★4を取得したい」とサイバーセキュリティ対策に力を入れていく考えだ。
ゲートウェイ型普及への道筋
スマートホームの規格標準化とセキュリティ対策によって、日本でも「IoT型」のスマートホームを導入しやすくなる可能性がある。しかし、居住者が必要とする「スマートライフ」サービスを提供するには「ゲートウェイ型」をいかに普及させていくかが重要だろう。
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