「子どものやる気が出ない家」には共通する"ルール"があるーー実は、やる気を引き出そうとする必要はない
筋肉は、トレーニングをサボり、楽をすればするほど衰えていきますが、脳も同じことが言えます。
脳に楽をさせる環境を用意して、ただスマホをいじる、YouTubeを観る、ということをしていると、私たちの脳はどんどん楽をするようになり、自分で考えることをやめ、ついには、やりたいことがない、無気力な人間へと流されてしまうわけです。
これは、子育てだけでなく、私たちビジネスマンにも関係する問題でしょう。
チャットGPTに聞けば答えが出てくる時代です。若者たちは易々と使いこなし、アイデアが出てこないときには、チャットGPTにアイデアを求め、出てきた意見に「おー、いいじゃん」と歓声を上げ、その選択肢から選ぶ。
答えを早く求める風潮が、古い世代が若い頃に大切にしてきた「脳で汗をかく」という経験を奪い、脳に楽をさせてしまう。その結果、徐々に私たちの「自分で考える力」を奪っているように感じるのは私の杞憂でしょうか。
子どものやる気を引き出す意外なアプローチ
そうは言っても、スマホの誘惑は相当なものです。スマホがもたらしてくれる数々の魅力に比べたら、勉強の魅力はどうでしょうか。YouTubeやゲームよりも、勉強をしたいと思わせることは可能なのでしょうか。子どもをスマホから引き離し、勉強やスポーツに向かわせるには、どうしたらいいのでしょうか。
このことについて、行動心理学という学問の分野は、意外なアプローチを教えてくれます。
実は、子どもに勉強をさせたいと思ったら、やる気を引き出そうとする必要はない、というのです。
行動心理学では、人が行動を習慣化するのは、やる気ではなく「仕組み」だと指摘しています。
例えば、歯磨き。
やる気で磨いているでしょうか?
私たちは「今日も歯を磨くぞ!」というやる気で習慣化しているわけではありません。朝起きたら歯を磨く。夜、寝る前に歯を磨く。そんなふうに、「決めている」から習慣化しているのです。
「家に帰るとテレビばかり観て勉強しない」という問題も、やる気ではなく仕組みで考えると解決が可能です。
家に帰って、一番座りやすい場所にソファーがあり、そのソファーの目の前にテレビがあって、リモコンが手に取りやすいところに置いてあると、ついソファーに座り、ついリモコンを手に取り、ついテレビをつけてしまうのです。テレビ番組には、つい見続けられるようなフックがあって、気づけば何時間も視聴してしまいます。