美人キャスター自死を政争に使う韓国政界の非情 イジメ抑止の本質がぼやけては本末転倒だ
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ユン・ソンニョル大統領の弾劾審問が大詰めを迎え、次期大統領選挙を視野に入れた激しい攻防を繰り広げている韓国政界。その場外戦が思わぬところで進行中だ。「職場のイジメ禁止法」の改正案、通称「オ・ヨアンナ法」をめぐり、与党「国民の力」が野党第一党「共に民主党」に攻勢をかけている。
韓国の公営放送局(株式型)、文化放送(MBC)の気象キャスターを務めていたオ・ヨアンナさんが、社内のイジメを苦にして自ら命を絶ったのは昨年9月。これが、年が明けた今年1月末になって大きな波紋を呼んだ。
生々しいイジメの実態が明るみに
保守傾向が強いといわれる大邱に拠点を置く地方紙「毎日新聞」がイジメの赤裸々な内容を報じると、たちまち全国のトップニュースとなった。遺族がパスワードを解いた携帯電話から2750字に及ぶ遺書が見つかり、残されたメッセンジャーアプリ「カカオトーク」でのやり取りや、イジメとされる録音などからは、生々しい実態が明るみに出た。
1月27日付の毎日新聞によると、誤報を出した先輩のミスがオさんのミスにすり替わり、先輩に誤りをただすと、「後輩が私のような先輩に教えようとするの?」と言われたほか、韓国の人気トーク番組への出演が決まった際には「あなたに何の話ができるの?」と嘲笑されたという。
後追いしたメディアからはさらなる詳細が次々と報じられ、録音されたファイルにあった先輩とのやり取りも公開された。夜中に帰宅したばかりのオさんは家から会社に呼び戻され、実力不足を指摘された後、人格否定ともとれる言葉が放たれた。
MBCの気象キャスターは6人いるが、オさんと同期の1人を除いた先輩4人は、カカオトークに4人のチャットルームを作り、オさんへの不満のほか、「体からヘンな匂い」や「被害者ぶっている」などと書き込んで共有していた。
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