美人キャスター自死を政争に使う韓国政界の非情 イジメ抑止の本質がぼやけては本末転倒だ

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韓国では2000年代半ば頃から「甲(カプ)チル」といわれ、パワハラ行為が問題になってきた。有名なものは、2014年12月に起きた「ナッツ・リターン事件」だろう。

アメリカのジョン・F・ケネディ国際空港から離陸のために滑走路に向かっていた大韓航空機において、ファーストクラスに搭乗していた同社副社長が機内サービスとして出されたナッツにクレームをつけ、旅客機をゲートに引きかえさせた事件だ。

2017年には、労務士、弁護士らによる市民団体「甲チル119」も設立されている。

「オ・ヨアンナ法」は世論の批判もあり、野党は重い腰を上げ、与野党は2月20日に協議する予定となった。

韓国で法律に通称名をつける事情

法律に通称名をつけるのも韓国特有だ。長く記憶に残す目的があり、これまでも名前を冠した法律はいくつかあった。

例えば、2019年10月、K-POPのガールズグループ「f(x)」のソルリさんが悪質リプライなどを苦にして自死した後、「情報通信網法」の改正案、通称「ソルリ法」が発議された。2021年12月から施行された同法により、インターネットの準実名制で10万人以上が利用するネットサイトの運営者は、放送通信委員会の求めに応じて、書き込みの投稿者のIDを公開することが義務づけられた。違反すれば約300万円以下の過料が科される。

今回の法改正をめぐっては、歓迎する声と、実効性がないとする声が交錯している。だが、オさんの自死が政争に消耗されて、問題の本質がぼやけてしまっては本末転倒だろう。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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