どの産業と、どれだけ取引をしているのか。家計や法人への販売はいくらぐらいあるのか──。通常ではなかなか見えない取引関係を、主要36業界を事例に、産業連関表を使って図解した。

「大阪・関西万博の経済波及効果は約2兆円!」
そんな報道を目にしたことがある読者も多いだろう。実は、この経済波及効果を計算するのに欠かせない統計が「産業連関表」だ。
産業連関表は、経済構造や波及効果を分析する、マクロ経済の統計資料。もともとは旧ソ連出身で、米国で教鞭を執った経済学者のレオンチェフが1936年に考案。経済予測の精度が評価され、初めは米国で、その後は各国で作成されるようになった。レオンチェフはその功績で73年にノーベル経済学賞を受賞している。日本では51年を対象年次に作成を開始、55年から5年ごとに作成している。
単一基準で取引関係見る
現在は政策立案や冒頭のような経済波及効果、二酸化炭素排出量の計算などに使われている。
本特集では、産業間の取引構造をサプライチェーンと解釈し、産業連関表を使った図解を作成した。農業や鉄鋼、化学の部門数が多く、IT系が少ない、発表が4~5年先という難点はあるが、単一基準で多くの産業の取引関係を見ることができる唯一の統計だ。
産業連関表では、縦方向の列で、財・サービスの生産に使われた原材料、燃料、労働力などの費用構成が部門ごとに示され、それを「投入」や「供給」と呼ぶ。一方、横方向の行で、生産された財・サービスといった部門ごとの販売先の内訳が示され、こちらは「産出」や「需要」と呼ぶ。
2024年6月公表の「産業連関表(20年)」から、「取引基本表(生産者価格評価表)」のデータを使った。生産者価格表が基本で、表の部門数も投入445、産出391といちばん多いからだ。
投入を左側、産出を右側の棒グラフに組み替えた。産出では控除扱いとなる輸入を左側に移し、総供給と総需要が一致するようにした。また、マクロ統計と会計とでは用語の概念が異なるが、読者の利便性に鑑み、会計に近い用語を独自に記した。
各要素では上位項目を並べているが、産業ごとの取引関係を明示するという特集の趣旨のため、産業部門の自部門からの投入と産出(総務省によれば下請けなどを指す)、手数料だけが記載される卸売りと小売りは除外している。
各産業の取引構造を把握するきっかけにしてほしい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら