「トランプ2.0」に食われないための日本企業の心得 問題が起きてからのロビイングではすでに遅い
――「トランプ2.0」の通商政策ですが、メキシコとカナダに対する追加関税については大統領令への署名から一転、1カ月の延期を発表しました。こうしためまぐるしい動きをどうみていますか。
やはり関税男(タリフマン)が2期目でも復活しましたね。通商に関する権限は憲法上、アメリカの連邦議会にありますが、その議会が長年さまざまな法律を可決して、大統領に通商権限を委譲してきた関係で、大統領が単独で多くの関税を課せる権限を保有するようになってきました。
トランプ氏の関税政策の狙いは2つあります。1つは本来の目的である、不公正貿易の是正。もう1つはほかの政策をめぐる交渉目的で、今回のカナダ、メキシコ、中国に対する追加関税もその側面が大きいです。具体的には、不法移民や麻薬問題の対策のための、関税による”威嚇”ですね。
今回の追加関税についての根拠法は国際緊急経済権限法(IEEPA)というもので、大統領が国家緊急事態を宣言すればさまざまな貿易規制を導入できるという、非常にパワフルな法律です。
同法が関税に利用されるのは今回が初めてですが、今後IEEPAなど既存の通商法を利用して、関税を武器にいろんな国と交渉する動きを、トランプ氏は見せていくのではないかと思います。
1期目では保護主義的な政策に抵抗する”防波堤”となる高官が複数いましたが、2期目に関してはそれがほとんどいないというのも重要な点です。
追加関税「いったん撤回」判断の背景
――一方で、メキシコとカナダへの関税賦課は土壇場で延期となりました。トランプ氏はなぜこのような判断をしたのでしょうか。
北米経済は1994年に発効したNAFTA(北米自由貿易協定)以降一体化しているので、仮に追加関税を発動した場合、アメリカの国内経済に加え域内経済、とくに自動車産業やエネルギー産業に大きなダメージを与えることが確実視されています。
関税発動を発表した後には株式市場も下落しました。1期目もそうでしたが、トランプ氏は市場の動向に非常に敏感です。同時に、カナダ、メキシコから国境での移民・麻薬対策での協力を得たことをアピールする機会も持てたため、とりあえずは1カ月の猶予期間を設けて交渉するという判断になったのでしょう。
とはいえ、また1カ月後に同じことが起きる可能性はあるので、引き続き動向を注視する必要があると思います。
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