まるで鉄道模型?小さな列車「軽便鉄道」の記憶 線路幅の狭い「ナローゲージ」の懐かしい姿

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

北勢線は近鉄が廃止の方針を打ち出した後、2003年4月に地元の私鉄、三岐鉄道に経営が移管された。あすなろう鉄道は、2015年4月に近鉄から四日市市が母体の同鉄道に移管された。鉄道名は「ナローゲージ」とかけているところが面白い。

それぞれの路線を見てみよう。北勢線は、JR・近鉄の桑名駅に隣接する西桑名駅から藤原岳の麓の阿下喜駅まで20.4kmを結ぶ路線だ。西桑名駅を発車すると電車はJR関西線、近鉄名古屋線をオーバークロスする。この地点こそ、近鉄の1435mm軌間、関西線の1067mm軌間、そして北勢線の762mm軌間と、3つの線路幅が一挙に揃う線路マニアの「聖地」である。

途中にはコンクリートアーチ橋や軽便鉄道らしいガーダー橋梁もありファンを退屈させない。終着の阿下喜には軽便博物館と称する施設があり、かつてこの路線で活躍したモニ220形電車が復元され展示されている。220形は古豪と呼ぶにふさわしい電車で、筆者も現役時代に何度も追いかけた。

北勢線 200形
コンクリートアーチ橋を行く北勢線の電車(撮影:南正時)
モニ220 内部・八王子線
モニ220形は現在の四日市あすなろう鉄道である内部・八王子線でも活躍した(撮影:南正時)

近代化され生き残った軽便鉄道

一方のあすなろう鉄道は近鉄四日市駅の高架下から出発する。路線は本線といえる内部線5.7kmと、途中の日永駅から分岐して西日野駅までの八王子線1.3kmで、四日市市郊外の通勤通学列車として利用客も多い。車両もリニューアルし冷房化された。内部線と八王子線が分岐する日永駅構内はまるで鉄道模型のような趣きがあり、軽便ファンの気持ちをくすぐる。

内部・八王子線 モニ210
近鉄時代の内部・八王子線で活躍した戦前製のモニ210形(撮影:南正時)
四日市あすなろう鉄道
近代化された現在の四日市あすなろう鉄道の電車(撮影:南正時)

全国で軽便鉄道が姿を消した中、これらの貴重な路線が存続したのは、どちらも桑名、四日市という工業都市の路線であり、通勤通学手段として定着していること、そしてもともとは近鉄という大手私鉄の路線で近代化が進んでいたことも一因であろう。

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事