山火事にならない?「野焼き」が現代に復活の理由 春を告げる野焼きは全国で100カ所以上で実施

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一方、湿気の多い日本では、山火事が発生することはまれだ。したがってFire Ecologyの研究者はほとんどいない。岐阜大学流域圏科学研究センターを2022年に退職した後、北海道東部の小清水町に移住して研究を続ける津田智さん(68歳)(理学博士)は、日本での第一人者だ。山火事跡地の植物群落や野焼きによる植物への影響について研究してきた。

菅生沼のタチスミレ(提供:ミュージアムパーク茨城県自然博物館)

津田さんによると、日本全国で野焼きを行っている場所は、約100カ所、数え方によっては100カ所以上になる。秋田県寒風山などこの10年で復活させたところや静岡市の麻機遊水地など新たに始めた場所もある。目的は様々。草原景観の維持や絶滅危惧種の植物の保全のほか、伊東市の大室山など伝統的に行われてきた山焼きが観光資源になっている場所や、観光客に人気のワラビの生育のために始めた地域などがある。

野焼きで植物に悪影響はない?

野焼きによるメリットは、どこにあるのか。植物に悪影響はないのだろうか。野焼きの科学的メカニズムを、津田さんに説明してもらった。

「草原に火が入ると、地面を覆う枯草や植生が焼失する。灰が降り、窒素、リンなどの栄養塩類が増加する。野焼きで熱が発生するだけでなく、焼けた跡が黒くなり、直射日光が当たると地温が上がる。そうすると、硝化細菌が活性化して大気中の窒素を固定し、植物が利用しやすい窒素分が増える。熱の発生により種子の発芽が促され、地面を覆う枯草がなくなるので植物がよく育つようになる」

「野焼きにより、地表は高温になる。地上30センチのところで、ススキ群落の場合、最高700度、ヨシ群落で最高850度と高温を記録する。一方、地下2、5、10センチで測定したところ、ほとんど温度は上昇しないことがわかった。地下の根っこや地下茎が生きているので、例えばススキの群落を燃やした後に再びススキの群落が育つのです」

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