サム・アルトマンが描く「知能コストゼロ」の未来 ソフトバンクとAI事業開発へ

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OpenAI o1やo3のように、オーケストレーションのように複数の機能、探索を使いこなすアプローチも進んでおり、より効率的なAIの実装は進むだろうが、もう1つアルトマン氏が言及したのはエネルギーコストだ。

「私は近い将来、核融合発電の実用化が行えると考えている。商業レベルで核融合が実現すれば、AIの開発スピードが飛躍的に向上し社会全体の変革が加速する」と述べた。

ウェイルCPOも「核融合とAIの組み合わせは、人類の技術史において最も重要なターニングポイントになるかもしれない」と語り、同時にエネルギーコストの飛躍的な低下が、知識コストをゼロに近づける大きなマイルストーンとなるだろう。

”ゼロコストの知識”が作る未来

テクノロジーの進化はしばしば不安を伴う。OpenAI幹部の来日も、日本のビジネスパートナーを通じての資金集め旅行と揶揄する声もあるだろう。

だが、彼らのモチベーションは別のところにある。

”AIは人間の能力を拡張し、新たな可能性を生み出すためのツール”という実にシンプルな考えが根底にある。「今後のAI技術は、単なる計算能力の向上だけでなく、人間との相互作用によって新しい文化を生み出すものになる」

そう話しながら、アルトマン氏は自分自身の経験を交え、次のようなエピソードを話してくれた。

「私はソフトウェア開発者ですが、プログラミング学習は大きく変化しました。AIがコードを書けるようになったからです。あと数年もすれば、私たちはコードを今とはまったく異なる方法で書くことになるでしょう。”もうコーディングを教える意味はない”という人もいます。では、2026年のAIがこれらすべてを書けるようになったと仮定して、プログラミングの授業で学生に何を教えるべきでしょうか? プログラミングの授業とは何を意味するのでしょうか?」

これは筆者が、教育のカリキュラムをどのように見直すべきかと尋ねたときの話である。

「私たちはこれまでも、パンチカードからマシン言語を入力する時代、そして高級言語での開発、現在はもっと洗練された言語へとバージョンアップを経験してきました。しかし、プログラマーとして学ぶ概念や、ツールの使い方、コンピューターに望む動作をさせる方法などの本質は同じです。私が大学生だった時代でさえ、その10年前には必修だった知識を学ぶ必要がありませんでした。必要な知識は減っても本質は変わりません。このような変化が、今後も続くことを前提に学ぶ計画を立てることが正しいと思います」

AIによる未来はすでに始まっている。その変化をどう受け入れ、どのように活用するのか──それこそが今、私たちが問うべき最も重要な課題なのかもしれない。

アルトマン氏
終始、穏やかに、かつ力強い言葉で語ってくれたアルトマン氏(筆者撮影)
本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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