2009年6月、スペインの有名なサッカークラブ、レアル・マドリード会長フロレンティーノ・ペレスはついに宿願を果たした。ペレスの「夢見た一手」を完了させるために、レアル・マドリードは9440万ユーロという、当時史上最高の移籍金をマンチェスター・ユナイテッドに支払って、24歳のロナウドを獲得したのだ。
同月の初旬、レアル・マドリードはブラジル出身のミッドフィルダー、カカを、6800万ユーロという、ロナウドの移籍金は下回るもののやはり仰天するような移籍金でACミランから獲得していた。だが、マンチェスター・ユナイテッド時代に出場した300近い試合で、100得点を上回るシュートを決めたロナウドこそ、ペレスが長い間、いちばん欲しがっていた選手だった。
ロナウドの入団は多くの点で、ペレスが「銀河系軍団」戦略と名付けた、世界屈指のスター選手をクラブに引き入れようとする戦略を象徴するものだった。この銀河系軍団主義が最初の頂点に達したのは、2003年、世界中に名の知れたデイビッド・ベッカムが、すでにスター選手であふれていたチームに加わったときだった。
当時、チームには、ブラジル出身のロベルト・カルロスやロナウド・ルイス・ナザリオ・ジ・リマ(通常、単にロナウドと呼ばれる。ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドと混同しないように)、フランスのジネディーヌ・ジダン、ポルトガルのルイス・フィーゴ、スペインのフォワード選手ラウル・ゴンザレス、同じくスペイン出身のゴールキーパーのイケル・カシージャスなどが在籍していた。
スター重視戦略はクラブの思想に深く浸透していたので、レアル・マドリードの幹部はプレゼンテーションで、その年にクラブが獲得したスターの名前にちなんで各シーズンを呼んでいたという。たとえば、2001年がジダン、2002年がロナウド、2003年がベッカムという具合に。
ハリウッドに学んだ「スーパースター獲得戦略」
レアル・マドリードは、今やあらゆるスポーツの中で世界最大のプロチームであり、スーパースター獲得戦略にチームの命運を賭してきた。その手法は、一流の人材に多額を投資する映画スタジオやテレビ放送網、その他メディア事業に近い。実を言うと、そうしたメディア事業に実際に触発されたのだ。
「自分たちをコンテンツ制作者と見なすようになった」と、レアル・マドリードの幹部は証言している。もうひとりの幹部は、映画事業と直接、比較しながら言い添えた。「選手と試合――それがコンテンツにあたる。わたしたちが売ろうとする『映画』の主演が、たとえばトム・クルーズだったら、価値は上がる」。コンテンツ活用の成功モデルを理解しようとして、ハリウッドの映画スタジオがいかにして大ヒット作品を市場に送り出したのか、クラブの幹部たちは詳しく調べた。
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