スポンサーシップやマーチャンダイジング、その他マーケティング収入が、3500万ドルから1億4000万ドルと、この期間の収益源の中では最も急激な伸びを見せた。これは、放映権や試合当日の収益、国際試合賞金獲得額などよりも多い。2004~2005年シーズンまでに、レアル・マドリードは収益面では世界一のクラブに成長し、マンチェスター・ユナイテッド、ユベントス、ACミランをもしのぐほどになった。2010年、クリスティアーノ・ロナウドがレアル・マドリードで最初のシーズンを終える頃、総収益は6億ドル以上にも達していた。2014年時点で、レアル・マドリードはまだその地位を守っている。
スター個人がマーケティング収入をケタ外れに伸ばすこともある。一例を挙げれば、2003年のベッカム入団会見後の週末、レアル・マドリードはイギリスだけで、1枚平均80ドルのジャージをおよそ35万枚売り上げた。ほんの数日のうちにマーチャンダイジングで3000万ドル近くの収入を得たことになる。
1カ月後、レアル・マドリードはベッカムのアジアでの人気に乗じて、中国、香港、タイ、日本と17日間かけてツアーを敢行し、1000万ドル近い儲けを上げた。ほぼ一夜のうちに、ベッカムのアジアでの人気は、クラブにとって大きな財産となった。もっとも、ファンの中にはベッカムのサッカーの能力よりも、彼の容姿とセレブリティとしての地位に魅力を感じた人たちもいたかもしれない。
勝敗は紙一重、頼れるのはマーケティング収入
レアル・マドリードが「サッカー・マネーリーグ」を上り詰めたことから学べる重要な教訓があるとすれば、精彩を欠くパフォーマンスのせいで試合に負けても、スーパースター重視の戦略をとっていれば、コンテンツ制作者に害が及ばないということだろう。理論上は、スター選手を獲得すれば、トロフィーの数が増え、賞金を荒稼ぎできるはずだ。2011年のUEFAチャンピオンズリーグの優勝チームには、7000万ドルの賞金が与えられた。だが、スーパースターがトロフィーを持ち帰らなくても、クラブの収入は必ずしも悪影響を受けない。
2000年以降から2015年までに、レアル・マドリードの宿敵FCバルセロナは国内リーグで7回、チャンピオンズリーグでは3回の優勝を果たす一方、レアル・マドリードは、国内リーグでは5回、チャンピオンズリーグでは2回の優勝と、やや見劣りする。それでも収入ランキングのトップに上り詰めてその座を保っている。
勝利と敗北の違いがほんの紙一重ならば、安定した収入源を持つことが特に重要になる。ベッカムがレアル・マドリードでプレーした最後のシーズン(ベッカムはこのとき、入団後、初めてリーガ・エスパニョーラでの優勝を経験した)で、チームはまさに瀬戸際の攻防を繰り広げており、最後の4試合のうち3試合までも、試合開始後90分(つまり試合終了ぎりぎり)に敗北を免れた。
一方、宿敵FCバルセロナは終了直前にゴールを許してポイントを落とした。時として、運が大きな違いを生み出すこともある。それならば、マーケティング収入を促進するトップクラスの人材がいなければ、サッカークラブ――どんなエンターテインメント事業でもそうだが――の収支決算の数字は、大きく上下する可能性があるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら