「低パフォーマンス社員」解雇が日本で難しい現実 米IT企業がリストラも日米の人事評価に違い
日本企業の特徴は、この3つをバランスよく評価することだ。「成果だけ」「能力だけ」という一面的な評価はしない。むしろ「情意評価」を重視する傾向がある。
情意評価とは、従業員の業務に対する意欲や姿勢、勤務態度などの評価だ。近年、日本企業においてその重要性は高まっている。情意評価は、単なる業績やスキルの評価にとどまらず、従業員の内面的な成長や企業文化の醸成に寄与するからだ。
個人主義の意識が高い欧米と比べて、チーム全体のパフォーマンスを重視するのが日本だ。チームワーク、組織力で勝負する基本姿勢は今も同じ。だから「ムードメーカー」「オピニオンリーダー」的な人については必ず正当な評価をすべきだ。組織の空気をよくし、新しい組織文化の醸成にもつながる貴重な人材だからだ。
また、日本における若年層の「拒否回避志向」が高まっていることも忘れてはいけない。「低パフォーマンスだから」で切り捨てるような会社に、多くの若い人は入りたいと思わないだろう。
「低パフォーマンス」という言葉の危うさ
アメリカのIT企業が言う「低パフォーマンス」とは何を指すのか。主に仕事の「成果」のことだと考えられる。しかし、人材の価値は成果だけでは測れない。
短期的な成果は低くても、長期的に見れば重要な仕事をしている人材もいる。このような価値を「低パフォーマンス」という一言で切り捨ててはならない。
メタやマイクロソフトの「低パフォーマンス社員」に対する施策は、日本企業にとって大きな示唆を与えている。しかし、その考え方をそのまま日本でも導入することは避けるべきだ。
そもそも「低パフォーマンス社員」という表現には、強い違和感を覚える。20年以上、企業の現場に入って"目標を絶対達成させる"コンサルタントである私でさえ、そう感じることが多い。
たとえば、ある業績不振の企業で経営者から、「パフォーマンスの低い社員をどうにかしてください」と相談されても、私は即座にこう答えてきた。
「その言い方はやめましょう。短期的な成果だけがパフォーマンスの指標ではありません」
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