「立喰鮨かきだ」が渋谷駅前に出店する"賭け" 修業ゼロで寿司握り人気店を実現した蛎田社長

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何年もの修行が必要といわれる寿司の業界で、門外漢がなぜ成功できたのか。大きな理由は、氏が「社長であること」にある。老舗の高級寿司店はいくらお金を出しても、予約さえ困難なことがあるが、社長の人脈があれば、それらの店にも出入りが可能だ。蛎田氏はさまざまな店で舌を肥やし、自分なりの理想の味を追求してきた。その理想を投入したのが有楽町かきだだ。

「修行しなくても70点の味は出せる」というのも、まったく未経験の自分が握りをやって、成功したからこそ得た経験則だ。

「何事もセンスがあればすぐに上達するし、センスがなければいくらやってもだめ」とは、人材会社の社長として実感している。自身も大学卒業後に入社した証券会社で、営業だけは最初から成績が良かったとのことだ。
なお、現在は蛎田氏自身が寿司を握るのはイベント時ぐらい。有楽町かきだでは職人が握っているそうだ。

「『大将』を名乗っている自分が握らないことがうちの強み。発想を広げて事業を展開できるし、ブランドの顔となって客を呼び込める」

立地面の難しい要素

では、蛎田氏の基準では成功に至っていない、渋谷の立喰鮨 かきだは今後どのように運営していくのだろうか。

目標レベルに届かない要因として、一つには立地を挙げる。駅近の商業施設、路面という好立地ではあるが、難しい要素がある。

「通り道になっていて、人の往来は多いものの、食事目的の通行人が案外少ない。上層のレストラン街なら、『何を食べようか』とブラブラする人もいると思うが……」

立喰鮨 かきだ
「立喰鮨 かきだ」を出店した渋谷スクランブルスクエア2階は好立地のようだが、扱いが難しい立地でもあった(撮影:今井康一)

また横に細長く、飲食店としては使いにくい。同店の前にはミシュラン店のフレンチシェフの名を冠した、ブリオッシュ1つ1500円するベーカリーが入居していたが、2024年9月に閉店している。

並びの同様のスペースには、サラダ専門店の「クリスプ・サラダ・ワークス」が入居。テイクアウトするか、イートインでもサッと食べるタイプの店だ。サラダは1つ1000〜2000円なので、高額なテナント料を考えれば、かなり数を販売する必要があるだろう。

構造上も業態を選ぶ難しい物件なのだ。

売り上げを増加していくためには、さらなる知名度アップ、価格を含めた商品の見直しなどが必要。スピーディに手を打っていくのが氏のやり方で、実は1月中旬の取材後、執筆している間にメニュー構成や価格が変更になった。

2月からメニューに登場した「富士山ネギトロ丼」。写真の並(いくら入)税込1500円のほか、上(いくら&うに入)同2000円、特上(いくら&うに増量)同4000円、最強(いくら&うに超増量)同1万円をラインナップ(写真:ユニポテンシャル)

「有楽町かきだの成功は、立地、価格、商品品質の絶妙なバランスで実現できた。しかし、たまたま当たっただけで、手法として再現性がない。だから立喰鮨は当たるやり方を模索する実験店。ここは月商1500万円のポテンシャルがあると考えている」

このように、蛎田氏がトライアルアンドエラーを繰り返し、ビジネスとして成功する手法を追求するのには理由がある。目指すのは、自分ならではの理想の寿司店だ。

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