フジ「番組CMの8割がAC」、会見で疑念払拭なるか 日本生命などスポンサー企業は現状をどう評価?
重大な不祥事を抱えるテレビ局の番組に広告を出してもマイナスイメージにしかならないというのは、企業であれば当然の理屈だ。単にイメージが悪くなるから止めるのか、それとも自社が人権侵害を助長することを防ぐために取引関係を見直すのかは、似ているようで大きく違う。
見極めるポイントは、取引関係を見直す理由を対外的に十分に説明しているかだ。フジテレビに対して具体的にどのような是正を求めているかもカギになる。自社のステークホルダーに対して人権侵害を許容しない姿勢を示すだけでなく、問題企業に対応を促すことにつながるからだ。
こうした観点から見ると、トヨタの回答には物足りなさを禁じ得ない。CM差し止めを公にしているにもかかわらず、「情報が一連の報道のみである状況において、総合的に判断した」とだけ回答したNTT東日本も同様だ。
なお、広告代理店の電通は、書面質問での各設問には回答しなかったが、「報道を担うフジテレビ社に対する社会全体の信頼が揺らぎかねない深刻な状況」とし、「すでにしかるべき説明および対応の実践を求めている」とのコメントを寄せた。
フジ・メディアHDの大株主である東宝も設問には回答しなかった。ただ、「株主としてこのたびの問題について、フジ・メディアHDに対し事実関係の調査など適切な対応を行い、早期の信頼回復に努めるよう要望を伝えている。当社としては今後も同社と対話を続けながら対応を注視する」とコメントした。
博報堂DYホールディングスとファーストリテイリングは、少なくとも3日間あった書面質問の回答期日内に返答がなかった。
日本生命「調査結果は適時適切に説明を」
トヨタとともに迅速なCM差し止め判断で注目されたのが日本生命だ。5月末に同社の筒井義信会長が日本経済団体連合会の会長に就任するだけに、日本生命の動向は他社の判断にも影響したとみられる。
書面質問では17日会見の受け止めを「十分」「どちらともいえない」「不十分」から選んでもらう形式の問いを設けた。
この設問に日本生命は「不十分」と回答。「報道等を確認するところでは、人権の観点での懸念が払拭されるような十分な説明はなされず、事実関係は未だ不明瞭なままであると認識している」と理由を説明した。
CM差し止めは「報道状況を総合的に勘案して」行ったと回答。「報道されているような懸念事象の実態把握・調査を適切に進めていただくとともに、調査結果等を適時適切に説明いただくことを求めている」とする。
ほかにCM差し止めを行った企業では、第一生命保険やキリンホールディングス、ヤクルト本社が17日会見を「不十分」と評価。第一生命とキリンHDはともに取引先に対して人権方針の理解と順守を求めていると強調している。
ヤクルト本社は、フジ・メディアHDの大株主として「より一層の客観性ある事実調査および検証を待ち、対応を検討する」ことを求めているとコメントした。
【1月28日17時50分追記】ヤクルト本社からも書面質問に対する回答を得られたため追記します。
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