「フジテレビ問題」の根源は"経営不在"にある 2010年代から「一人負け」に陥ってしまった

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90年代までは、「経営」が必要なかったのかもしれない。毎日番組を送りだしていれば、大きな売り上げを獲得できたし成長もできた。テレビビジネス市場全体が上向きだったからだ。その中で断トツ1位だったフジテレビは、ドラマもバラエティもスポーツも、報道やワイドショーでさえ、とにかく視聴率が取れて何をやっても当たるテレビ局だった。

2000年代に入ってテレビ広告市場がもう伸びなくなり2008年のリーマンショックで市場が激しく縮小した。そんな中でもフジテレビはトップだったが、2010年代になると様相が変わってしまった。

「経営」に取り組もうとしなかった

だがそれでもフジテレビは何も変えなかったし、「経営」に取り組もうともしなかった。社長は数年置きに次々代わって、業績ダウンの責任を取ったようで実は、80〜90年代の黄金時代を築いた世代で回していただけだった。

変わらなかったのは当然で、本当のトップの座は同じ人物が占めてきた。現在は相談役に退いたように見える日枝久氏が君臨し続けている。

日枝氏は、1980年代のフジテレビの大躍進に、創業一族の鹿内春雄氏を支え貢献した。そして早世した春雄氏に代わった義弟の宏明氏がワンマン経営に走るとクーデターを起こして実権を握った。その後もフジテレビの断トツポジションを築いたことには功績があると言っていいだろう。

だが2000年代以降、市場環境が変化したことにあまりにも鈍感だった。そればかりか、宏明氏同様のワンマン経営に走り、「院政」を強いて人事権を手放さなかった。社長に選ぶのは過去に功績があるものの経営手腕には疑問な人物ばかり。

2021年にフジテレビの社長になった金光修氏は経営手腕があると期待されていたがなぜか2022年に交替し、そのあとで社長に就いたのが港浩一氏だ。「夕焼けニャンニャン」でディレクターを務め、「とんねるずのみなさんのおかげです」をヒットに導いた制作者だが、経営者としては当初から疑問視されていた。

社長になってさっそく往年のヒット番組名をもじって復活させた「オールナイトフジコ」が編成された。港社長へのゴマスリではと感じたのは私だけではないだろう。深夜にシロウト女子大生をいじる、時代遅れのお寒い番組だ。

日枝氏の独裁といまのフジテレビ上層部の「経営」意識のなさはこれまでも指摘されてきたが、今回こそメスが入るのではないか。

幸い、現場には優秀な社員も多く、ヒットドラマを生みだしている。バラエティも昨年の「27時間テレビ」で若者と共感する方向性を見出した。上層部が変われば十分再生できるはずだ。いっそ、社員一丸となってクーデターを起こせばいい。自分も同じことをやったのだから、日枝氏に文句を言う権利はない。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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