「フジテレビ問題」の根源は"経営不在"にある 2010年代から「一人負け」に陥ってしまった

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ところが2011年に視聴率三冠王(期間中6〜24時、19〜22時、19〜23時のすべての平均視聴率がトップになること)の座を日本テレビに奪われてから状況が変わってきた。それまでは三冠王を日本テレビに取られても売上高では圧勝し続けていたのが、2010年代はみるみる下がっていった。時代の変化に何ら対応しなかった経営不在の表れだ。

各キー局決算資料 売上推移
(画像:各キー局決算資料より筆者作成)

2023年度までに売上高は約23%もダウン

グループ連結売上だとテレビ局自身の業績が見えないので、決算資料から単体売上高の数字を取り出してこの10年間の推移を比べてみた。

テレビ離れの逆境の中にあって他のキー局は増えることはないものの大きく売上高を減らさず踏ん張っている。ところがフジテレビだけはどんどん売上高を減少させ、2014年度から2023年度までに約23%もダウンしていた。一強だったフジテレビが一転し、「一人負け」に陥ったことが明確だ。

売上高で見ると1位から2位グループの上位に下がったように見える。だがテレビ局の屋台骨である放送収入で見ると、状況はさらに悪化していた。

各キー局決算資料 放送収入推移
(画像:各キー局決算資料より筆者作成)

2018年度から2023年度の放送収入だけを取り出して比べると、売上高では2位グループの上位にいたのが、テレビ朝日とTBSテレビにも突き放されて単独4位に落ちている。こうなると、2024年度は売上高でも4位に転落するかもしれない。広告主がCMを差し替えるだけでなく本格的に引き上げはじめたら、そうなってしまうだろう。

なぜ売上高も放送収入も急減したのか。それは、フジテレビには「経営」が存在しないからだ。

驚くべきことに、フジテレビは中期経営計画を発表していなかった。2023年5月にようやく発表したが9ページしかない薄い中身で、「拡がる」とビジョンめいた言葉はあるものの何をしたいか不明な内容。「経営とは未来を指し示すことである」とよく言われるが、何も指し示していない。

2010年代後半以降、危機感を高めた他のキー局は明快なビジョンを打ち出し、社員にとっても株主にとっても会社としてどんな方向へ向かうのかはっきりわかるようになっていた。フジテレビだけ何も示さない。つまり、「経営」と呼べるものが存在しない企業なのだ。

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