日本製鉄「USスチール買収成功」へのプランBとは トランプ次期政権ではむしろ可能性あり!?

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それにしてもゴンカルベス氏の言い草はひどい。なぜ日本が邪悪かというと、「日本が製鉄を含め、中国にたくさんのことを教えた。(中国の鉄鋼メーカー)宝鋼集団は、日本製鉄によってつくられた」からだそうだ。あのー、それって1970年代、半世紀も前のことなんですけど…・・・。

日本製鉄は、買収提案に先立って宝鋼集団との合弁を解消し、韓国からも撤退し、経営資源を日米印に集中させる方針である。そのうえで粗鋼生産1億トン体制の構築を目指す。鉄は装置産業だ。盛大な国内需要に支えられ、「多多ますます弁ず」の中国企業に打ち勝つのは至難の業だ。問題はその中国経済が今では不況になっていて、過剰生産の中国製の鉄が輸出されて世界中を席巻しかねないことだ。

あまりに虫がよすぎるクリフス社

だから日米ともに、鉄鋼生産の競争力を高めることが急務となる。USスチールは経営を立て直さねばならず、そのためには追加投資が不可欠である。他方、日本製鉄は成長が見込めるアメリカ市場において、原料から販売までの一貫体制を築きたい。そのために1株55ドルでUSスチール買収をオファーしているのである。

これに対し、クリフス社の提案はまことに虫がいい。「USスチールはアメリカ企業であるべきだ」と愛国心に訴えるが、クリフス社に追加投資できるような資力はない。しかもUSスチールとクリフス社が経営統合すると、シェア100%近い鉄鋼会社ができてしまう。当然、独禁法上の問題が生じるし、それで値上げとなれば、自動車産業などアメリカ国内で鉄を買う業界から反対が出るだろう。

なおかつ、クリフス社の買収提示価格は1株30ドル台後半にすぎない。これではUSスチールの株主にとっては心外であろう。USスチールのバレットCEOは、バイデン大統領の買収阻止命令に対し、即座に以下のような怒りの声明を発出している(拙訳)。

「バイデン大統領の本日の決定は恥ずべきものであり、腐敗している。彼は組合のボスと結託し、この国の未来、労働者、国家安全保障を害した。日本という重要な同盟国を侮辱し、アメリカの競争力をリスクにさらした。中国の指導者たちは小躍りしているぞ」

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