「つぶれる百貨店」「生き残る百貨店」の明確な違い インバウンド需要の恩恵があるのはごく少数
元々、江戸期の呉服店ルーツの大老舗百貨店である松坂屋は、外商売上が半分を占めるといわれており、地域富裕層に圧倒的な顧客基盤を持っている。この基盤を活用してさらに富裕層消費の追い風を取り込もうというのであり、この戦略が相応の成果をあげることは間違いない。名古屋の百貨店業界は、高島屋VS松坂屋のデッドヒートで、結果としての2社寡占とならざるをえないのである。
消える百貨店・残る百貨店の差
こうした環境を踏まえると、名鉄名古屋駅直結とはいえ、名鉄百貨店が百貨店事業としては断念する、というのもうなずけるかもしれない。今の百貨店においては、インバウンド、富裕層取引でシェアを取れなければ、売り上げを十分に確保することは難しいからだ。
ただ、名鉄はターミナル消費の取り込みを諦める、と言っているのではない。駅前再開発で商業施設を含む大型複合ビルに転換することを選んだだけである。名鉄は鉄道会社であり、その経営目的は、沿線、周辺地域の付加価値を上げることで沿線に住むことの価値を上げていく=沿線価値向上であり、百貨店はたくさんあるツールの1つにすぎないからだ。
すでに、首都圏では、東急、小田急、京王、東武などの民鉄大手が自社ターミナルの商業施設として、百貨店から複合ビルへと転換する方向性を打ち出している(百貨店をやめるとは明言していない会社もあるが、その可能性がないことは断言できる。なぜなら、そんな決断をしたらステークホルダーが納得しないからだ)。
今後遠くない将来、インバウンドに適した立地、もしくは、富裕層に支持される品揃えと外商部隊を持っている百貨店以外は、大都市ターミナルから消えることになるだろう。大都市ターミナルというのは、稠密な鉄道網が張り巡らされた日本独特の高効率な商業立地だ。これを従来型百貨店の低い投資効率のまま放置することを、資本主義は許さないのである。
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